文部科学省が全国学力テストの学校別成績の公表を来年度から認める方針に転じた

▼これまで「過度な競争や学校の序列化を招く恐れがある」として公表を禁じていたが、全国の自治体で首長主導の公表が相次ぐ中、国が「ルール違反」を追認したことになる

▼一覧表や順位付けは認めない、と配慮事項も発表したが、学校名と数値がそろえば簡単に序列化できる。対象学年が1人というへき地校では、学校成績イコール個人成績だ。公表の判断を市町村教委に「丸投げ」することも含め、国の無責任さにあきれる

▼教育に市場原理を導入した例は近年、英国の全国統一学力テストや米国の落ちこぼれゼロ法がある。両国とも競争と懲罰で教師と子どもを追い立てた結果、大量の脱落者を生み出し、格差と社会不安が増大した

▼米国では軍が勧誘するための学業不振者のリスト提出を求めた場合、学校は原則として拒否できないという。同じ道をたどりかねない方針転換をするのは、そうした社会を目指すというメッセージなのか

▼教育の到達度や課題を見るためなら、不正などの余地がない抽出調査の方がより正確なデータを得られるはずだ。毎年全員参加のテストに使う数十億円の巨額予算を、少人数学級の増設や教員採用の枠を広げることに配分すべきではないか。(田嶋正雄)