虫歯を治療することなく放置すれば、健康や発達にさまざまな悪影響を及ぼす。検診が治療に結び付いていない現実を直視した上で、行政の踏み込んだ対応を求めたい。

 県保険医協会の調査で、学校検診で虫歯などが見つかった小中学生のうち、7割以上がその後、歯科を受診していなかったことが分かった。虫歯が10本以上あったり歯がぼろぼろになったりしている「口腔(こうくう)崩壊」の子どもがいる学校も全体の4割を超えた。

 養護教諭を対象にしたアンケートには「虫歯に大きな穴が開き、口の中が痛いと泣いて保健室に来た」「歯が一本もなく、口腔内ですりつぶして食べていた」など痛々しい事例が並ぶ。 

 県内の12歳児の平均虫歯数は1・7本で全国ワースト。今回の調査でも歯科を受診しない未受診率は、全国と比較して15ポイントも高かった。

 背景とされるのは、保護者の経済的困窮や時間的余裕のなさである。ネグレクト(育児放棄)が疑われるケースもあった。

 県子どもの貧困実態調査で、子どもが病気になっても病院に行かない「受診抑制」が貧困層で2割前後に上ったことが、それを裏付ける。理由として挙げたのは「多忙」「自己負担金が支払えない」などだった。

 親の意識の低さを指摘する声もあるが、沖縄の子どもの貧困率の高さを考えれば、仕事や生活に追われ病院に連れて行けなかったり、費用を心配して受診をためらっている姿が浮かぶ。

    ■    ■

 要保護世帯や準要保護世帯には治療費の負担がない医療券が発行される制度がある。子ども医療費助成制度によって自己負担のない自治体もある。

 それでも虫歯を放置する家庭があるのは、制度利用が十分でなかったり、申請の仕方を知らないなど、必要な人に必要な支援が届いていないからだろう。

 気になったのは養護教諭のアンケートにあった「ほぼ前歯がなく、あまり笑わない」「周りの子どもたちが、お前の父ちゃんも歯がないよな、と言っている」といった記述だ。虫歯の治療ができないばかりに周囲から奇異の目で見られ一人悩んでいるとしたらやるせない。

 歯科未受診を家庭だけの責任とせず、援助の視点を広げた方がいい。経済的・時間的余裕がない家庭の子どもたちを養護教諭らが歯科に連れて行くのも一つの方策だ。

    ■    ■

 子どもの貧困がクローズアップされるようになって以降、強い関心を集めたのが教育の問題だった。世帯の所得と子どもの学力に関連があることが数々の調査で示され、無料塾や給付型奨学金などの対策が取られてきた。 

 他方、経済的困窮が子どもの健康や発達にどう影響しているのかの調査・研究は深まっていない。

 虫歯が放置されているように、学校での視力や聴力検査も、その後の受診につながっていないのではないか。

 検診後の受診率や治療率について実態を調査する必要がある。