東京大学教育学部4年 宇地原栄斗さん(22)=那覇市出身

 日本の最高学府・東京大学に通う現役大学生。周りの同級生が名の知れた国内外の企業やキャリア官僚を目指す中、NPO法人の一員として生活保護世帯などの子どもたちへの学習支援に心を砕く。「教育格差を終わらせる」。現場で1人の子どもの成長をつぶさに見届けるまなざしの先には、この国の子どもたちの育ちの環境を変えるという果てしない夢が広がる。

「つくり上げた学習支援モデルを沖縄に届けたい」と目標を語る宇地原栄斗さん=東京都内

 高校卒業後の浪人時代。創立まもない那覇市内の予備校で学んだ。生徒約60人に先生4人の小所帯。ユニークな先生たちは「受験にとらわれない勉強をしよう」と、社会に目を向け、課題をどう切り取るかという視点を教えてくれた。母子家庭で育った生い立ちもあり、自然と沖縄が抱える貧困問題に関心が芽生えた。

 東大に入ると環境は一変する。周囲は世帯年収が数千万円という裕福な家庭の子ばかり。よくいわれる「学力の差=経済力の差」を肌で感じた。友人に貧困の話を振っても「その人の努力が足りないからでしょ」という返事。学習さえもままならない境遇への感受性のなさに閉口してしまう。

 学習支援事業を行うNPO法人「ラーニング・フォー・オール」に出会うのは大学2年の春。学生がボランティアで教師となり、学習困難な状況にある子どもの元へ派遣されるプログラムに加わった。

 受け持った東京・葛飾区の中3男子は、3桁割る2桁の計算に苦しむほどだった。明るい内気な子だったが、同級生から「バカなのになぜ勉強するんだ」となじられ、傷ついていた。目標は都立高合格。二人三脚の受験勉強が始まった。

 結果へのこだわりがNPOの基本理念。学力がつき、その子自身が「自分の人生が変わる」と思える体験を目標に据える。

 半年後。10点台だった模試は50点を超え、単位制の都立高に見事合格した。「やればできる」という感覚が男子生徒に生まれたことが何よりうれしかった。

 昨年春から、教師役の学生を指導するマネジャーに昇格した。子どもたちが将来に希望を抱ける居場所づくりにこだわりたい。もっと言えば、行政と連携し、地域のセーフティーネットとして育てる包括的な枠組みが最終的な理想だ。

 社会の受け皿をつくるなら、中央省庁や政治の場で汗をかく方法もあるのでは、と尋ねてみた。「1人の子が救われる現場を大切にしたい。予算を落とす側ではなく、政策に組み入れられる質の高い現場づくりに関わりたい」。自然体の受け答えが頼もしく映った。(東京報道部・西江昭吾)=連載・アクロス沖縄<99>

 【プロフィール】うちはら・えいと 1995年、那覇市生まれ。垣花小、鏡原中、開邦高を卒業後、1浪して東大文科3類に入学。現在、教育学部基礎教育学科4年。NPO「ラーニング・フォー・オール」は1月、社会の課題解決に取り組む優れた組織を表彰する「エクセレントNPO大賞」を受賞した。今の肩書は学習支援事業部プログラムマネージャー。