世界初のジャイアントマンタ飼育と展示にはいくつも難関があった。中心になって乗り越えたのは沖縄美ら海水族館の飼育員2人。金谷悠作さん(36)は5月末から半年間、海上のいけすで餌付けを工夫し、見守ってきた。「黒潮の海」大水槽の展示責任者、松本瑠偉さん(40)は搬送プロジェクトの現場リーダーを務めた。(北部報道部・阿部岳)

ジャイアントマンタの搬送前に手順を確認する(右から)松本瑠偉さん、金谷悠作さん=15日午後9時前、本部町の通称エキスポ港(金城健太撮影)

動き止めると衰弱

 大きいマンタが定置網にかかった、という連絡が読谷村漁協から入ったのは今年5月29日。松本さんらが急行して、ジャイアントマンタだと確認した。

 ジャイアントマンタは羽ばたくようにひれを動かして全身に血を巡らせているとされ、動きを止めると衰弱してしまう。読谷村沖の定置網から本部町沖のいけすまで、通常ならいったん陸に揚げてトラックで移動するところを、全て海路で移動して時間を短縮した。ジャイアントマンタがかかった場合に備えた事前の計画が実を結び、翌日すぐに実行に移せた。

 次の関門は餌を食べてもらえるかどうか。いけす担当の金谷さんはマンタと一緒に潜水し、餌を狭い範囲にまいたり、広くまいたり。試行錯誤を続け、13日目で食べさせることに成功した。

昼間は道路使えず

 最後の関門は水族館まで無事に運ぶことだった。水温が高い夏場はマンタの酸素消費量が上がり、危険性が高い。10月まで待ち、一度台風で延期になった後、11月15日に実行した。

 クレーンで船に載せてまた下ろす負担をなくすため、新たに導入した直径25メートルの大型いけすにマンタを入れたまま港までえい航。特注の水槽が大き過ぎて昼間は道路が使えないため、夜まで待ってから大型トレーラーで水族館に運んだ。

 搬送プロジェクトには水族館を指定管理する沖縄美ら島財団の研究員らも含め、約60人を動員した。金谷さんは「力を合わせて百点満点の搬送ができた」と振り返った。

手探りで頑張った

 世界で初めて野生のジンベエザメの採血に成功するなど経験豊富な松本さんは「ジャイアントマンタの飼育法は誰も知らない」と話し、「手探りで頑張ってくれた」と金谷さんをねぎらった。

 搬送を成功させた15日、2人は「黒潮の海」大水槽の前で夜を明かした。「元気かどうか心配であり、うれしくもあり」と笑う。「多くの人に大きさを見てほしい。海にはすごい生き物がいることを知ってほしい」と願っている。

 [ことば]2種類のマンタ エイ類のうち通称マンタと呼ばれるのは和名オニイトマキエイの1種だけと考えられてきた。ところが、2009年に2種類に分かれていることが判明。この時英語でジャイアントマンタと呼ばれた大型の種が和名オニイトマキエイ、小型の種が和名ナンヨウマンタと改めて命名された。