53歳の誕生日を前に記者会見した秋篠宮さまが、こう問題提起した。

 「大嘗祭(だいじょうさい)は皇室の行事として行われるもので、宗教色が強い。それを国費で賄うことが適当かどうか」

 「宗教行事と憲法との関係はどうなのかというときに、やはり内廷会計で行うべきだと思っている」

 来年の天皇の代替わりに伴う重要儀式「大嘗祭」のあり方についての異論である。

 天皇は毎年11月、その年に収穫されたコメなどの穀物を皇祖神などに供え、国の安寧と五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈る宮中祭祀(さいし)「新嘗祭(にいなめさい)」を執り行っている。新嘗祭のうち天皇に即位して最初に行われるのが「大嘗祭」で「天皇霊継承の秘儀」(宗教学者・山折哲雄氏)ともいわれる。神道形式で行われるため、宗教的性格が強い。

 毎年の新嘗祭の費用は天皇家の私的活動費である「内廷費」から支出されてきた経緯がある。

 他方、大嘗祭については、皇室行事と位置付けて公的活動費である「宮廷費」で賄われてきた。

 平成の大嘗祭関連費用は、儀式の舞台となった大嘗宮の建設など約22億円に上った。政府は既に宮廷費からの支出を決めているが、皇族が政府決定に異議を唱えるのは異例のことだ。秋篠宮さまは宮内庁長官がこの意見に「聞く耳をもたなかった」とも話しており、これも異例の発言である。

 皇族からの「身の丈にあった」「本来の姿」にという問題提起を、政府はもっと前に受け止めるべきではなかったか。

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 信教の自由を保障するため、政府と宗教団体とを分離し、政治に宗教的中立性を求めるのが、憲法が定める政教分離の原則である。

 現憲法下で初めて行われた平成の代替わり儀式では、政教分離原則に反するとして各地で訴訟が起きた。

 いずれも請求は退けられた。だが1995年、全国の市民千人余りが原告となった「大嘗祭訴訟」の控訴審判決で大阪高裁は「儀式への国費支出は政教分離規定に違反するのではないかとの疑いは一概には否定できない」と指摘、実質的に憲法判断に踏み込んだ。国のかかわり方に警鐘を鳴らしたのである。

 来年の大嘗祭についても違憲訴訟の動きが広がっている。今回の発言は、こうしたいきさつを踏まえたもので、憲法上疑義が生じない儀式はどうあるべきか、重い一石を投じたと受け止めたい。

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 政府は天皇代替わりに伴う重要儀式について、今年3月の式典準備委員会で「前例踏襲」を決めた。わずか3回の会合で結論ありきともいえる内容だった。

 憲法は、天皇を「日本国民統合の象徴」だと規定している。象徴天皇とは何か、どのような存在であるべきか。核心に迫る国民的議論は、憲法制定時を除けば、これまであまりなかった。

 存命中の天皇退位は約200年ぶりで皇室は大きな転換点を迎える。憲法の理念にふさわしい儀式のあり方について議論を深める必要がある。