沖縄県久米島町仲泊の洋菓子店「お菓子の店しまふく」のパティシエ、島袋一喜さん(35)がオリジナルのパウンドケーキ「島の滴」を作った。地元の泡盛を使った、香り豊かな品で6月の父の日に発売した。心には2013年に亡くなった先代店主の父、正さん(享年57歳)がいた。8年間の神戸修業を終え、今春から故郷で頑張る姿を見せたかった。7~9日に那覇市のタイムスビルで開く「久米島町 観光・物産と芸能フェア」でも販売される。(南部報道部・堀川幸太郎)

泡盛「久米島」「美ら蛍」を使ったパウンドケーキ「島の滴」

8年間の神戸パティシエ修業を終え、父を思う品「島の滴」を生み出した島袋一喜さん=11月29日、久米島町仲泊の「お菓子の店しまふく」

泡盛「久米島」「美ら蛍」を使ったパウンドケーキ「島の滴」 8年間の神戸パティシエ修業を終え、父を思う品「島の滴」を生み出した島袋一喜さん=11月29日、久米島町仲泊の「お菓子の店しまふく」

味の秘密は、泡盛の使い分け

 包丁がすっと入る、きめ細かい生地。口に含むと、しっとりとした口当たりとともに、ふくよかな泡盛の香りが広がり、すっと鼻に抜ける。抑えの効いた甘さ、練り込んだ小豆の歯触りと相まって味わい深い。味の秘密は、素材との相性を見極めて近所の米島酒造(田場俊之社長)の「久米島」「美ら蛍」を使い分ける技術にある。

 一喜さんは最初、父の日限りで50個を売った。口コミで広まり、客に促される形で店の人繰りが付く週1、2回、店に並べるように。11月に那覇市で開かれた離島フェアでも売り切れた。

 建築士や洋菓子材料商社員を経て、27歳だった2011年、神戸の老舗洋菓子店で働き始めた。2年後の13年、父が亡くなった。闘病中、帰郷を相談すると「まだ早い。満足できるまで修業してこい」と背を押してもらった。朝も夜もなく働く日もある中、分業制の勤め先で焼く、飾るなどの技を一通り身に付けた。「島の滴」は修業中から温めたアイデア。今年4月に帰郷後、試行錯誤を重ねて形にした。

 一喜さんは、菓子職人としての父はもちろんだが、人付き合いの仕方が心に残っているという。店は商店街「新興通り」で約40年前に開店。通り会の面々と街をどう盛り上げるか語らう姿だ。酌み交わしていたのが今回使った「美ら蛍」。自らも愛飲する思い出の泡盛だ。

 母の現社長、ルミ子さん(60)は泡盛とみそを除く多くが島外産なのに久米島土産として扱われていたことを憂いて1993年、「元祖みそクッキー」を考えた。今は定番として喜ばれる。島を思う二人の長男、一喜さんは「学んだ技を生かし、島のよいものを伝えたい」と意気込む。

 タイムスビルでのフェアでは「島の滴」を島と同じ1350円で販売する。問い合わせは「お菓子の店しまふく」、電話098(985)2058。