久米島産のモヤシは「惣慶もやし」と呼ばれる。特定の品種やブランドの名ではなく、島唯一のモヤシ農家、惣慶長吉さん(69)が作ることから付いた通称だ。飲み水でも売られている沖縄県久米島町阿嘉の名水を使い、無農薬で育てる。長年、島の学校給食で親しまれ、東京の高級料理店からも引き合いがある。(南部報道部・堀川幸太郎)

久米島唯一のモヤシ農家、惣慶長吉さん。地元の名水で育てた無農薬モヤシは食感に定評がある=11月28日、久米島町阿嘉

久米島そば店「やん小~」の「島味噌もやしそば」。山盛りになった惣慶もやしはこしが強く、みずみずしい=11月30日、同店

久米島唯一のモヤシ農家、惣慶長吉さん。地元の名水で育てた無農薬モヤシは食感に定評がある=11月28日、久米島町阿嘉 久米島そば店「やん小~」の「島味噌もやしそば」。山盛りになった惣慶もやしはこしが強く、みずみずしい=11月30日、同店

 惣慶もやしは臭みがなく、シャキシャキとした食感が特長だ。

 町比嘉の儀間一美さん(52)はサラダで食べる。「歯触りが良く、うまみが豊か。オリーブオイルと塩だけでいける。冷蔵庫で10日くらいもつのもいい」。地元スーパーでは同じ重量比で他のモヤシより2割近く高値だが「惣慶さんの方から手に取る」と、島の味としての定着ぶりを証言する。

 町仲泊で久米島そば店「やん小~」を営む仲宗根直樹さん(51)は、開店2年目の2008年から使い続ける。「1年を通じて高い品質と量を保つ。水の豊かな島の文化の結晶。食感や味わいは海ぶどうみたい」と語る。人気のそば店で、取材は惣慶もやしの名を出す条件で受けるというほれ込みようだ。

 惣慶さんは島生まれで小学1年から本島暮らし。計4度の転校を経験し中学卒業後の働き先の一つが、モヤシ業者だった。当時から久米島に望郷の念があった。島に農家がなかったモヤシに可能性を見いだし、つぶさに仕事を覚えた。

 大阪、那覇での会社勤めを経て1979年に結婚した。町阿嘉で妻八重子さん(62)の実家の風呂に入り「せっけんが落ちない?と思うくらい肌がすべすべになる地下水の良さ」に気付いた。83年に島に移住し、栽培がうまくいくか1年間確かめて翌年に念願のモヤシ農家になった。

 ほぼ毎日、午前3時から夫妻で収穫する。限られた人手で出荷できるのは1日150キロ前後。評判を聞いて仕入れを望む業者もいるが、全てに応じることはできない。手作業でモヤシのひげを取り、出荷に励む惣慶さんは「ひげも食べられるが、おいしい部分がたくさん入っている方がいい。島の水が育んだ恵みを伝えたい」とにかっと笑った。

7~9日 タイムスビルで販売

 惣慶もやしは7~9日、那覇市のタイムスビルで開く「久米島町 観光・物産と芸能フェア」で販売される。