釣りを長いことやってきて「難しいな」と思うことのひとつに、初級者を指導するというのがあります。
磯のウキ釣りで、彼に魚が掛かった時、相手に触れてはいけないというのがエドの考えですから、とにもかくにも「口で指導する」しかありません。
「き、来たぁ、先輩、来ました!」
「こりゃあデカそうだな」
自分の竿(さお)に来たならば、すでに戦闘態勢に入っているはずが、
「よし、いいか、巻くなよ、まだ巻くな、竿を立てろ、タメるんだ!」
「タメるって?」
釣り用語も通じない。
「いいから、竿を立てりゃいいんだ」
「このくらいですか?」
「ちがう、もっと。竿を体の後方まで持ってくる、そうそう、よしっ今度は竿を前に倒して余った糸を巻け、バカ、巻いたらすぐに竿をまた起こすんだ、早く!」
「アアーッ」
「魚が突っ込んだぞ、糸を出せ、ドラグ調整してあるんだろ? ナニ、してない? 早くゆるめろ!」
「ハ、ハイ」
「いつまで出しているんだ、止めろってば!」
自分で釣っている方がよっぽど楽だわいと思える瞬間なのであります。(芸能もやる磯釣り師)