社説

社説[米軍機部品落下1年]訴えは届いているのか

2018年12月8日 08:20

 「安全な当たり前の空の下で遊ばせたい」

 米軍普天間飛行場に近い緑ヶ丘保育園に米軍ヘリの部品が落下する事故が起きてから1年。母親たちは子どもの未来を守るため、声を上げ続けている。

 保護者らでつくる「チーム緑ヶ丘1207」のメンバーは丸1年たった7日、東京で要請行動を展開した。外務省や防衛省などの担当者と会い、事故原因の究明や園上空を米軍機が飛ばないよう求めたのだ。

 政府への直接要請は2月に次いで2度目。県内でも在沖米総領事館、外務省沖縄事務所、沖縄防衛局のほか県や県議会、宜野湾市を訪ね陳情を繰り返している。これまで集めた署名は約14万筆に上る。

 保護者の活動は事故の翌日から始まるが、ほとんどの母親はそれまで陳情や抗議とは無縁だった。

 保護者の一人、与那城千恵美さんが語った次の言葉が印象に残る。

 「こんな危険な場所に住んでいたのかと、魔法が一瞬で解けた」

 高さ約10センチの円筒の部品は1歳児クラスの部屋の屋根で見つかり、もう50センチずれていたら園児が遊ぶ園庭に落ちていた。

 「一歩間違えれば子どもたちの頭上」という恐怖や怒りが、見慣れた風景だった基地への向き合い方を変えたのだ。

 母親たちの背中を強く押したのは「子どもが親になった時、また同じことが起こらないよう、今変えなければ」との思いである。

    ■    ■

 この日、チーム緑ヶ丘のメンバーは「国民の安全な環境を守るのが国の仕事。それを求める権利が私たちにはある」と声を詰まらせ訴えた。

 なぜいまだに原因究明が図られないのか。なぜ日米で合意した「できる限り学校、病院を含む人口密集地上空の飛行を避ける」という約束が守られないのか。

 それに対する納得のいく回答はなかった。

 米海兵隊岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機とKC130空中給油機が、高知県沖で接触し、墜落する事故が発生したばかりだ。

 先月12日には米海軍のFA18が北大東村の南西の海上に墜落した。嘉手納基地所属のF15戦闘機が本島近海に墜落したのは6月のことである。

 母親たちが作成した嘆願書には、子どもたちの命が常に危険にさらされている恐怖と不安がつづられている。

 頻発する米軍機事故に、その恐怖や不安は増すばかりだ。

    ■    ■

 普天間飛行場の周辺には、学校や保育園を含む公共施設約120カ所が集中している。

 基地との強いられた共存が、子どもの命と安全を脅かしている。

 「できる限り避ける」という日米合意は、どれだけ守られているのか。その実態を、常時調査して報告する義務が政府にはある。

 日常的に子どもの頭上を米軍機が飛び交うという不条理を解消する、具体的な方策を示すべきだ。

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