裁判所が元副知事の口利きを認定した。

 2015年の教員採用試験を巡る口利き疑惑で、安慶田光男元副知事と諸見里明前教育長の双方が損害賠償を求めた訴訟で、那覇地裁は「口利きは存在した」と認定。安慶田氏に525万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 安慶田氏が教員採用の1次試験に合格した特定の受験生を合格させるよう諸見里氏に働き掛けた疑惑である。

 地裁はこのように事実関係を認定した。

 1次試験の合格発表の2、3日後の15年8月中旬ごろ、安慶田氏の携帯から諸見里氏の携帯に電話があり、副知事室に呼ばれた。

 安慶田氏から手渡されたはがき大のメモ用紙には3、4人分の氏名、受験番号、受験科目などが記載され「よろしく頼むよ」「1次試験の合格者だ」などと告げられた。

 諸見里氏は持ち帰ったが、幹部と相談するなどして応じることはなかった。

 口利きを認定した根拠は、諸見里氏の供述が県教育庁幹部らの証言と合致する、供述は当時の感情を交え具体的で迫真性に富む、不正を見過ごしにはできないという正義感に駆られての行動であると理解するのが自然である-ことなどである。

 県教育委員会による介入認定、那覇地検による諸見里氏の不起訴、疑惑を調査した外部有識者による県の第三者委員会も「口利きがあった可能性が高い」と結論付け。そして今回の那覇地裁による口利き認定である。4機関が同じ判断をしており、教員採用試験に介入しようとした安慶田氏の責任は極めて重い。

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 名誉毀損(きそん)の損害賠償としては異例の高額となった。安慶田氏の行状の悪質性が高かったからだとみられる。

 安慶田氏が記者会見で口利きの事実を否定したことについては「直ちに違法性を帯びることはない」とする。だが「作り話で名誉を侵害された」とまで言及していることから、名誉毀損の構成要件に当たると判断したのである。

 諸見里氏が安慶田氏を陥れようとしたのではないかとの疑念を抱かせるとともに、その社会的評価を低下させるものだからだ。

 それだけではない。

 当事者の安慶田氏は口利きを当然知っていたにもかかわらず、刑事告訴や民事訴訟を提起したことについても「著しく相当性を欠き、違法」と厳しく批判している。当然の指摘である。

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 公正であるべき教員採用試験が圧力によってゆがめられてはならない。

 県教育委員会は不当な働き掛けが撤回されない場合、内容を記録表に記載しホームページで公開するなどの要綱を昨年3月に策定した。

 第三者委は知事に対し、知事や副知事ら「特別職」も対象とした県職員倫理規程の改定や条例化、口利きを記録化して上司に報告することなどを提言した。だが知事部局は1年がたつのにまだ検討中という。口利きは過去にもあったとの指摘もある。二度と起こさないためにも速やかに提言を実行に移すべきだ。