社説

社説[辺野古 土砂投入強行]自治破壊の非常事態だ

2018年12月15日 09:28

 「胸が張り裂けそうだ」

 名護市の米軍キャンプ・シュワブゲート前で土砂投入を警戒していた男性は、怒りと悔しさで声を震わせた。

 辺野古新基地建設を巡り、防衛省沖縄防衛局は14日午前、土砂投入を強行した。

 海上では最大50隻のカヌー隊が繰り出したが、土砂を積み込んだ台船と、土砂投入場所が制限区域内にあるため作業を止めることができない。

 護岸に横付けされた台船の土砂が基地内に入っていたダンプカーに移された。約2キロ離れた埋め立て予定海域南側まで運び、次々投入する。

 ゲート前には故翁長雄志前知事夫人の樹子さんも姿をみせた。樹子さんは以前、「万策尽きたら夫婦で一緒に座り込むことを約束している」と語ったことがある。

 しかし夫の翁長前知事は埋め立て承認の撤回を指示した後、8月8日に亡くなった。

 「きょうは翁長も県民と一緒にいます。負けちゃいけないという気持ちです」

 沖縄戦当時、キャンプ・シュワブには「大浦崎収容所」が設置され、住民約2万5千人が強制収容された。

 マラリアなどが発生し逃げることもできないため400人近くが亡くなったといわれる。まだ遺骨はあるはずだと、ガマフヤー代表の具志堅隆松さんはいう。

 シュワブは、日本本土に駐留していた海兵隊を受け入れるため1950年代に建設された基地だ。

 沖合の辺野古・大浦湾は、サンゴ群集や海藻藻場など生物多様性に富む。

 そんな場所を埋め立てて新基地を建設するというのは沖縄の歴史と自然、自治を無視した蛮行というほかない。

    ■    ■

 日米合意では米軍普天間飛行場の返還は「2022年度またはその後」となっている。岩屋毅防衛相は14日、合意通りの返還が「難しい」と初めて認めた。県は新基地の運用開始まで13年かかるとみている。普天間の危険性除去は一刻を争う。

 このような状況で辺野古にこだわるのは、沖縄の「目に見える負担軽減」、普天間の「一日も早い危険性除去」、日米同盟の「安定維持」のいずれの面から見ても、あまりにも問題が多すぎる。

 政府は「辺野古が唯一」と繰り返すが、何の説明もなく呪文のようにそれだけを唱えるのは説明責任を放棄した脅しというしかない。

 県と政府は1カ月間の集中協議をしたが、この間も政府は工事を止めなかった。県の中止要請を聞きながし、留意事項に定められた「事前協議」には応じず強行の連続だ。

    ■    ■

 県が埋め立て承認を撤回したことに対し沖縄防衛局は国民の権利救済を目的とした行政不服審査法を利用し、撤回の効力停止を申し立てた。

 国土交通相がこれを認めたことで工事が再開されたが、法の趣旨をねじ曲げる奇策というほかない。

 土砂投入は来年2月24日の県民投票をにらんで県民にあきらめ感を植え付けるのが狙いだろう。ここには安倍政権が口を開くたびに強調する「沖縄に寄り添う」姿はみじんも感じられない。

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