国の特別天然記念物アマミノクロウサギが徳之島にも生息していることはあまり知られていない。一方、島の固有の植物が盗掘されるケースが後を絶たない▼そんな現状の中、徳之島の自然を紹介する図鑑「いのちつながる徳之島」(新樹社)が発刊された。地元の写真家や自然愛好家が撮影した動植物のカラー写真を多数掲載。島の成り立ち、固有種のトクノシマトゲネズミやオビトカゲモドキなどについて詳説している▼島で自然保護活動に取り組むNPO法人徳之島の会が編集した。これまでになかった徳之島の自然だけを取り上げた親しみやすい図鑑を目指したという。会員の鈴木章さん(64)は「地元の自然について知らない島民も多い。豊かさを多くの人に伝え、次世代に受け継ぎたい」と語る▼世界自然遺産登録を目指す「奄美・琉球」の4島のうち、面積約248平方キロの徳之島は最も小さい。希少種が息づく照葉樹の森が人の生活圏の身近にある半面、保全の難しさも抱える▼理事の行山(ゆきやま)武久さん(69)は「観光客が増えた場合、ゴミやトイレの不安もある。島の自然や伝統文化のよさを見直す活動を通し、住民の意識を高めたい」と話す▼登録は最短で2016年夏。国内5番目の自然遺産の誕生には、徳之島に限らず地元の理解の深まりが不可欠だ。(田嶋正雄)