【小橋川慧カナダ通信員】カナダの首都オタワ市で、那覇市小禄出身の高良洋子さん(65)が36年間経営してきた「BOKO(ボコ)ベーカリー」が11月末、市民に惜しまれながら閉店した。独創的な装飾クッキーなどが人気で、閉店のニュースは地元の新聞やテレビで取り上げられた。高良さんは「多くの人に支えられ感謝している。自分のしてきたことを誇りに思う」と感慨深げに語った。

36年にわたり、ベーカリーを切り盛りしてきた高良洋子さん。色とりどりのクッキーは人気商品の一つ=オタワ市エルギン通り・ボコベーカリー(提供)

店の前で人気商品ができるのを待つ人たち(提供)

36年にわたり、ベーカリーを切り盛りしてきた高良洋子さん。色とりどりのクッキーは人気商品の一つ=オタワ市エルギン通り・ボコベーカリー(提供) 店の前で人気商品ができるのを待つ人たち(提供)


「多くの人に支えられ感謝」現地メディアも報じる

 店は、オタワ市のダウンタウンを南北に走る目抜き通りにある。閉店までのカウントダウンが始まると客足は増え続け、最終日の11月25日は、開店前から客が並び「この世からクッキーがなくなると思っているかのように半端ない量を買い求めた」(高良さん)。

 地元紙のオタワ・シティズンは前日朝刊の1ページを使い、店の歴史に触れ、常連客の悲しみの声を紹介。ほかに複数のテレビや大学メディアでも報じられた。

 高良さんは小禄高校、国学院大学を卒業して、1977年に那覇市内の幼稚園に勤務。翌年に調理の専門学校を出た男性と結婚。オタワ市にある日本食の食堂がシェフを求めていたのに応じてカナダに渡った。

 食堂で働きながら、パン屋を開こうと考えた。「日本食はまだカナダの社会に浸透しておらず、一方で主食のパンは必ず売れるという確信があった」

 パン作りは素人だったが、夫の友人で専門の職人を日本から招いて指導を受けた。貸店舗が出ると、高良さんは店周辺の人通りの多さを入念にリサーチ。82年、ボコが誕生した。

 客がトングで商品を取るセルフサービス方式はオタワでは初めてで評判に。「客がトングをカチャカチャ鳴らしながら焼きたてのパンを競うようにトレイに載せるさまは壮観だった」

 98年の離婚で、高良さんは経営全般の責任者になった。沖縄から手伝いに来た両親に助けられ、3人の子育てと店の切り盛りに奔走。米軍基地のベーカリーで勤務経験のある父健一さん(91)の提案でクッキーやパイなどの販売も始めた。

 5年ほど前から長男の純さん(36)、嫁の理絵子さん(30)、三男の城(じょう)さん(29)が経営に参加。人気キャラクターや動物、四季をテーマにデザインしたアイシング・クッキーが好評で「奇抜で人を楽しませる装飾クッキーの店」と人気を不動のものとした。

 オタワ・マラソン60~65歳の部で優勝するほど元気な高良さんが今、閉店を決意したのは親孝行したい一心から。沖縄ではガラス細工に取り組む夢もある。「母は他界したが、苦境の時に沖縄から飛んできてくれた父が91歳になった。父の介護をしたい」と話した。