沖縄県名護市辺野古の新基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票を巡り、普天間飛行場を抱える宜野湾市の松川正則市長は25日、県民投票に係る予算を執行しない意向を表明した。県は宮古島市と同様、地方自治法に基づき勧告という対応を取る見通しだが、強制力がないため最終的には首長の判断に懸かっている。市町村での否決が相次ぐ状況に、条例を可決した県政与党からは懸念の声も上がる。(政経部・嘉良謙太朗、大野亨恭)
「宜野湾市は当事者。県民投票の意義を失いかねない重大な問題だ」。同市が投票不参加を決めたことを知った与党県議は、深いため息をついた。
県政与党には、当初から「穴だらけ実施」(与党議員)に懸念があった。「こうなることは自明だったからこそ、県民投票に消極的だった」と愚痴さえこぼす与党関係者もいる。
一部では住民や県が代わりに投票所を設置することはできないのか、との声も聞こえる。だが、投票資格者名簿の調製や投開票事務などは「市町村が処理することとする」と条例で定める。関係者は「仮に条例を改正したとしても、同名簿の調製は市町村選挙管理委員会でないと難しい」との見方を示す。
25日午前、知事室で与党会派の代表者6人と玉城デニー知事、県三役らが対応を協議した。謝花喜一郎副知事は、宮古島市が不参加不実施を正式に決定した場合「是正勧告を含め対応を検討する」と言及したという。
だが、地方自治法改正により機関委任事務制度が廃止され、県に事務を強制する権限はない。県民投票は代執行など強い関与が認められている法定受託事務ではなく自治事務で、県も関与は「是正の要求まで」との認識だ。不参加を決めた市町村に「お願い」せざるを得ない現状に、与党幹部は「県は対抗手段を持ち合わせていないのではないか」と疑念を持つ。
一方、今回の県民投票に否定的な自民党は静観する。県連関係者は「今回の2択の投票は必要ない。ただ、最終的に判断するのは市町村長で、賛成でも反対でもその意向は尊重せざるを得ない」と語る。