2018年12月22日夕刻、沖縄の人気観光地、国際通りにピンクのネオンがまぶしく光り始めた。店の中からは、首をかしげた怪しげなウサギがこちらを見つめている。目が合った通行人たちは、いぶかしげに立ち止まり、吸い寄せられるようにスマホで写真を撮っていく。いつの間にか、人だかりができ始めた。

「FR2 月桃」=23日、国際通り

 正体は、原宿、海外で人気のブランドFR2(エフアールツー)の新店舗「FR2 月桃」だ。“モノが売れない時代”と言われるが、FR2が原宿でコラボ新商品を売り出せば、明治通りまで続く長い行列ができたこともある。ネットでも飛ぶように売れ、生産が追いつかないほどの人気だ。


   しかし、なぜFR2は沖縄に出店したのか。


沖縄の企業との出会い

  沖縄出店は、沖縄のアパレルショップとFR2の石川涼代表との出会いに始まる。
 
 国際通りを中心にお土産Tシャツやプリント事業などを手がける「コスミック(代表取締役・中野芳彦)」はこんな悩みを抱えていた。

 「観光客に向けて長年、Tシャツを中心とした商品を手渡してきた。新しいものを取り入れるタイミングがない一方、インバウンドは増え、修学旅行生がおそろいでTシャツを買う機会が減っていることを感じていた。台湾のスタッフを雇って対策をしても、なかなかインバウンドも取り込めていない状況にあった」(森本浩嗣取締役)

コスミックの森本浩嗣取締役

 そんな時、つながったのがFR2の石川代表だった。
 森本取締役は「FR2はアパレルなのに、アパレルをやっていないビジネスモデルのように感じた。しかも、インバウンドを多く取り込めている。刺激的で、今のモデルから脱却できるのではないか」と考えた。

 沖縄への誘致ができれば、地元の企業ともノウハウを学んでいける。
 石川代表に沖縄出店について聞いてみた。「沖縄、おもしろいよね」。
 コスミックが運営する形で出店が決まった。
 

沖縄のFR2は“土産店”
 

 FR2の石川代表は、沖縄でのビジネスモデルをどう考えているのだろう。
 
 「もともと、店舗を増やしていくというビジネスモデルは考えていない。例えば、渋谷に出した店が成功して、地方に出店をしたとする。そうすると、その地方に住む人向けの店を作ってしまう。でも、外国人観光客も増えているのに、そもそも、日本人だけに向けて展開するビジネスはもう厳しい。どの国の人が訪れても対応できるビジネスモデルが必要。世界との距離がフラットなっている今、これまでの概念で出店しても意味がない。沖縄に出店したのは、観光地ビジネスに興味があったからだ」

FR2の石川涼代表

 今回、FR2は常に国内外からの観光客でごった返している国際通りを選んで出店した。通りは、土産品店、ドラッグストア、沖縄料理店がほとんどで、アパレルショップといえば、サーフ系やかりゆしウエア、修学旅行生が好むTシャツ店など沖縄で使える“実用的”な商品を揃える。おしゃれなファッションの店は、国際通りから一歩入った浮島通りにある。

 「扱っている商品はアパレルだけど、沖縄の店はお土産屋さん。沖縄には、外国人がたくさん来て、国際通りなら必ず歩くでしょ。だから国際通りに面している必要があった。沖縄のその店に行かないと買えない商品を用意して、沖縄に行くなら、FR2であの商品を買ってきてよと頼まれるくらいになるお土産屋さんになりたい」(石川代表)

FR2 月桃の店内

 2018年7月には、観光地ビジネスのテストケースとして、FR2原宿店の隣に「FR2 梅」をオープンさせた。オンラインでは売らず、現地に行かないと買えない仕組みにした。さらに商品はすべてピンクで統一。店舗、商品共にインスタグラムで海外へ一気に広がり、原宿を訪れる外国人が足を運ぶ人気店に成長した。 

   沖縄の「月桃」も同じ戦略を取る。オープンに合わせて、藤原ヒロシの「フラグメントデザイン」とコラボしたTシャツやフーディーを限定販売した。今後は沖縄の企業とコラボ商品を発売していくことも決まっている。


インスタで2年目の売上げは初年度の800%

 石川代表は現在43歳。アパレルブランドを立ち上げ、起業したのは24歳の時だった。「マグネット バイ シブヤ109(前・109MEN'S)」などで人気のブランド「VANQUISH(ヴァンキッシュ)」を展開。2010年ごろから海外戦略を練り始めた。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Thank u for coming @fr2getto!! “FRAGILE”@fujiwarahiroshi × #FR2 #fragment#FR2#fxxkingrabbits#fr2getto #fr2月桃#leica#leicasl#leicacamera

#FR2さん(@fxxkingrabbits)がシェアした投稿 -

 「これまでのように洋服を売ってもグローバルなファッション企業には勝てない。買うための理由がないものは、誰も買わなくなると思った。例えば、山登りに必要な洋服は買うけど、必要なければ買わない」

 そんな時、注目したのが写真だった。スマホとSNSが普及し、写真の時代が来ると感じていた。

 「世界中が写真でつながる時代になる。カメラマンという形のブランドを立ち上げたら、一番パイを取れるビジネスになる」と読んだ。

 FR2を誕生させたのは2015年。テーマは「We are Fxxking Rabbits」にした。カメラマンが着る服がコンセプトで、ウサギのマークがアイコンだ。インスタでは「Fxxking Rabbits」名義で魅力的な写真を撮影し、アップしている。

 「誰かがカメラマンをしているというより、ウサギがカメラマンのほうが、人がブランドに入っていきやすいでしょ」

店内から外を見つめるウサギ

 実際、広告費を使わなくても、インスタグラムの写真は、国内外に広まり、人気が出た。
 FR2の立ち上げ2年目の売上げは初年度の800%増、3年目は2年目の300%増にも上った。原宿店の場合、顧客の80%以上が外国人だ。特に、アジアに集中している。

 「アジアで1位になれば、世界をとれる。今まで53カ国行ってきて、アジアは圧倒的にパワーがあった。正直、欧米は考えていない」

 冒頭に書いた、沖縄の店舗の前で通行人の足を止めて写真を撮らせるのも、石川代表の戦略だ。


  FR2を知らなくても、気になってもらえるように店をピンクのネオンで飾った。そして、アパレルではない土産店だからこそ、店舗は数人でいっぱいになるほどこぢんまりとした場所を狙った。写真を複数の角度からでも撮りやすいように、立地は角を選んだ。

FR2 月桃

 「店全体がブランドのパッケージ。買わなくても通った人が店のことをSNSにアップしてくれれば、広がっていく。それに小さい店舗だけどめちゃくちゃ売れるっていうのもカッコいいじゃん」

 片手に持つスマホで原宿店の様子をチェックしながら、少し離れた場所から道行く人の動きを観察している。店舗の前に立ち止まる老若男女を見て、頬が緩んだ。
 
 「沖縄、成功の感触は?」と聞いてみた。

 「沖縄の店舗はまだ始まったばかり。みんなにもっと知ってもらって、お店に来てほしい。絶対ね」