舞台美術は、芝居の質を左右する大切な要素の一つだ。「ぬーがら、ふーじんねーらんたんやー(何だか、かっこ悪かったね)」。14年前、ある沖縄芝居を見た観客から、こんな感想が漏れた。道端の石垣や木々の枝ぶりが「うちなーむんあらん(沖縄風じゃない)」

▼芸能担当記者になったばかりで自分には違いが分からなかったが、後日、県外の人が描いたものだと聞いた。「ちゃんと教えたんだけどね…」

▼そう話したのは指導に当たった新城喜一さん(85)と、弟の栄徳さん(80)。1960年代後半に働いた「沖映演劇」を皮切りに沖縄芝居の舞台美術を手掛けてきた。2人の舞台美術の特色は強い日差しを思い起こさせる色調の鮮やかさ

▼やんばるの山の緑の深さ、砂浜のまばゆい白さ、素朴な民家や美しい赤瓦の家並み。架空の景色なのに濃厚な沖縄らしさが漂い、戦後生まれの自分でも懐かしさを感じる。まさに職人芸

▼兄弟の共通の悩みは舞台美術の後継者不足。常設の芝居小屋がなく、母の日など年に数回の公演だけでは、生計が立てられない。若い世代が育たないのは当然だ

▼県の無形文化財に指定されている琉球歌劇などの伝統継承とも関わる技術だが、実演家と違い継続的な養成事業もないのが実情。新城兄弟の技を次世代にどうつなぐか。関係者全体で知恵を出す必要がある。(玉城淳)