仕事や買い物帰りの人々が足早に行き交う那覇市久茂地。人混みの中、半年前から、アコースティックギターの音色と温かい歌声が響くようになった。陽明高校2年のシンガー・ソングライター凜翔(りんと)さん(17)はストリートで歌い、等身大の歌詞で街を行く人々を癒やしている。(社会部・西江千尋)

足早に歩く人々に優しい歌声で語り掛けるシンガー・ソングライターの凜翔さん=12月21日夕、那覇市久茂地

魅力は人との距離の近さ

 21日午後6時半、ゆいレール県庁前駅近く。ギターを抱えた凜翔さんが街路樹の縁にそっと座った。週4日ほど、夕方から2~3時間歌っている。慌ただしい街の喧躁(けんそう)とは対照的に、歌うのはソウルやバラードなどのしっとりした曲だ。

 幼少期から母の好きなバンド、ミスターチルドレンを聴いて育った。中学2年でギターをさわり始め、今年からオリジナル曲も書きためている。

 路上で歌うのは、聴く人との距離の近さが魅力だから。歌い始めの頃、足を止めて聴いてくれた一人の男性が悩みを話した。仕事で大きな失敗をしたこと。この先、生きていく気力を失いかけていること。

 その人の気持ちに寄り添える曲を歌った凜翔さん。泣きながら耳を傾けていた男性が、帰り際に言ってくれた言葉は今でも忘れない。「もうちょっと頑張ってみる。しっかり生きていくよ」

 時には聴衆から「もっと明るい曲、はやりの曲をやったら」と言われることもある。それでも、路上で出会ったさまざまな年代の人から悩みや不安を聞く中で「人生は楽しいことだけじゃない。つらい思いをした分、人の気持ちが分かるし、人生はすばらしいと思えるはず」と実感した。

 オリジナル曲「腐ってもウタウタイ」にはこうつづった。「投げつけられたものは誰かのみた眠れない夜/心で拳をにぎってウタウタイは今日も歌う」

 将来の目標はプロのミュージシャン。「誰かの心に届いたり、力になれる曲を歌いたい」。万人に受ける流行調の歌じゃなくたっていい。一人でも、自分の歌で背中を押される人がいてくれたら。その一心で歌い続ける。

 遠巻きに聴いていた人の拍手に、凜翔さんは照れくさそうに笑った。