浮気された事実を知るのは辛い。うそに気づかず、バカみたいに幸せな顔して生きていた時間が憎い。うそをつき通せなかったあいつはもっと憎い。あーあ、見る目ないな。心はカサブタだらけ。傷つきたくないから、うそを見抜くスキルを磨くことにした。

鈴木家の嘘

 正反対な人がいた。母だ。長男の自殺がショックで、その部分の記憶を失った鈴木家の母・悠子。家族は、母を気遣い「長男はアルゼンチンにいる」とうそをつくことにした。バレバレの下手なうそ。でも母は疑うことなく突き進む。息子の健康を喜び、感謝し、誕生日を祝う。うそを見抜くことに興味がない。大切なのは愛する者の幸せ。このままいくと彼女は確実に、激しく傷つく。でも、愛は強いから、彼女は大丈夫だ。

 どんなスキルよりも「愛」が強い。「母」の偉大さを思い知る1本。(桜坂劇場・下地久美子)

◇桜坂劇場で5日から上映予定