[新うちなーんちゅの肖像]ラッパー集団「604」リーダー MAVELさん(28)

 「輪を下げたロープの結び目の固さ/死ななくてよかった生きるのはつらいが/ステージで笑うたびに変わった気がした」 (「結偽(ゆいいつ)」)

ラッパーMAVELさん

てんぶす那覇前の広場はMAVELさん(右端)が仲間たちと集う場所。「人を受け入れる寛容さがうちなーんちゅの良いところ」=那覇市牧志

ラッパーMAVELさん てんぶす那覇前の広場はMAVELさん(右端)が仲間たちと集う場所。「人を受け入れる寛容さがうちなーんちゅの良いところ」=那覇市牧志

 沖縄のヒップホップシーンを代表するラッパー集団の一つ「604」のリーダーMAVEL(28)。過去には酒に溺れ、首をつって自殺未遂を図った経験がある。赤裸々につづった「結偽」のリリック(歌詞)のように、ヒップホップと仲間に出会って生きる道を見つけ、歩み続けている。

 中学2年生の頃いじめに遭い不登校に。長崎の全寮制の高校で3年間を過ごした。だが「刑務所のように」(MAVEL)厳しく管理された毎日がつらかった。卒業後は、たがが外れたように遊ぶ毎日が続き、専門学校を1年で退学。ホームレスになって酒に溺れた。依存症で幻聴やうつに苦しみ、実家の部屋に引きこもっては酒を飲む日々を過ごした。

 救ってくれたのは高校の同級生だった。「一緒に旅に出よう」。鹿児島から北海道までヒッチハイクで回った。覚醒剤で身を滅ぼした人、小指を失った牧師…。旅の途中ではさまざまな人に出会った。「人生は幸せだけじゃない。不幸なことも起こる。それが当たり前なんだ」と気付いた。

 「幸せな人生を送るにはどうしたらいいか」。中学の時に見た映画「8Mile」。ラップで成り上がっていく主人公の姿に自身の未来の姿を重ねた。マイクを握り、MCバトルに出場する中で仲間に出会った。「みんなで苦労を乗り越えていく。ここには仲間への愛がある」

 ステージでは自分の生きざまや音楽、仲間への気持ちをストレートに訴える。それに共感する聴衆の姿に、自分の生き方が肯定されているように感じてきた。

 「結偽」には「誰に決められた値札なんか剥いだ/安くないオリジナルに気付くための今だ」とつづった。ラップを続けるうちに「これからの俺の人生は俺が決める」と思えるようになった。

 12月9日、那覇市のライブハウス「G−shelter」。スポットライトを浴びたMAVELは穏やかな表情で聴衆に宣言した。

 「俺は決めたよ。ラッパーとして生きていくぜ」(南部報道部・知念豊)

[うちなーんちゅと感じるとき]初対面でも親密に

 那覇市牧志のてんぶす那覇前の広場は10年前から国際通りを中心としたストリートで生きる仲間が集まる場だ。てんぶす裏の公園は、ホームレスを経験した場所でもある。ここでは仲間とたわいのないユンタク(会話)を楽しんでいる。

 俺を慕って集まってくる仲間は誰でも受け入れている。初対面でもすぐ打ち解けられることが俺の良さであり、うちなーんちゅを自覚する部分。寛容さがうちなーんちゅの良さ。県外のラッパーもうらやましがる沖縄は俺にとって誇り。