就任前から日米で話題となり、着任後も新聞やテレビが頻繁に取り上げた。これほど発信力のあるセレブ(有名人)大使はいない
▼キャロライン・ケネディ駐日米大使が3日間の沖縄滞在を終え、きょう帰京する。米メディアも取材したが、ケネディ氏が望んだ県民との対話は十分ではなく、12日は最大関心事の普天間飛行場移設問題に言及しなかった
▼就任直後に訪れた東日本大震災の被災地宮城、岩手両県や被爆地長崎県の時とは大きく違う。被災地では住民とテーブルを囲み女性が作った「手編みたわし」を買った。「被災地を真剣に見てくれた」と喜ばれた
▼長崎では被爆者から体験を聞いた。20歳で広島を訪れた時と同様に「深く心を動かされた」と語り、核軍縮にも触れた。かの地の県民が共感したのは当事者と会話を重ねて寄り添い、支援する姿勢を明確に示したからだ
▼沖縄ではこうした場面は皆無だった。ただ、急きょ設定された稲嶺進名護市長との会談から分かるのは、ケネディ氏が柔軟な感性で地元の声を聞く姿勢を備えていることだ
▼今回、かつて沖縄で入院した父親のケネディ大統領を「沖縄で命拾いした。縁がある」とも述べた。ぜひその縁を引き継ぎ何度でも来県して見聞を深め、人権派大使として普天間問題をとらえ直してほしい。(与那嶺一枝)