大弦小弦

[大弦小弦]ドリアン助川さんの小説「あん」(ポプラ文庫)を年始に再読…

2019年1月8日 07:44

 ドリアン助川さんの小説「あん」(ポプラ文庫)を年始に再読した。中年のダメ男・千太郎が適当に作り売りするどら焼き屋が舞台。バイトで雇った76歳の徳江が作るあんが評判を呼び、小さな店は大繁盛した

▼手の不自由な徳江はハンセン病回復者だった。程なくうわさは広まり客足は途絶える。事態を察して店を去る徳江。千太郎と常連の中学生ワカナは、彼女の過去に何があったかを知ろうとする

▼国が90年間も続けた強制隔離政策。徳江は療養所内で50年、お菓子を作っていた。閉じ込められた自分たちの絶望を、甘いあんに包んで

▼1年前、入所者に実際の結婚式を見てもらおうと、沖縄愛楽園で職員同士の披露宴が催された。宮城雅人さん(32)と妻の春菜さん(30)は昨年12月27日、生後7カ月の菜ノ花(なのか)ちゃんを園に連れ、入所者にお披露目した

▼出迎えた105歳の仲村苗子さんは前日、赤ちゃんを枕に見立てて抱っこの練習をしたという。出産も許されなかった人たちの人生を想像し、菜ノ花ちゃんを抱く仲村さんの笑顔の写真を見ていたら涙が出た

▼生産性で人の価値を測る優生思想的な発想が、社会の隅々にはびこっている。ハンセン病問題は終わっていない。まずは知ろうとすることから始めよう。一人一人の行為の積み重ねで、社会は豊かになると信じる。(磯野直)

基地で働く―軍作業員の戦後
沖縄タイムス社
沖縄タイムス社
売り上げランキング: 352,603
前の記事へ 次の記事へ
沖縄関連、今話題です(外部サイト)
JavaScriptをOnにしてください