オスカー・ワイルドの小説「ドリアン・グレイの肖像」は、主人公の美貌の青年を通して快楽と背徳に溺れ堕落する人間の醜さや弱さを描く。自分とは何者か、について考えさせられる1冊でもある

▼英の人気ロックバンド「クイーン」のボーカル、故フレディ・マーキュリーさんが若いころ愛読していたという。以前、その理由を知りたくて手にしたが、答えを出せずにいた

▼映画「ボヘミアン・ラプソディ」を見て、少し分かった気がした。ゴールデン・グローブ賞の作品賞を受賞したマーキュリーさんの伝記映画。数々の名曲の誕生の合間にみえる葛藤や孤独、悩みもがく姿は胸に迫る

▼同性愛者でもあり、愛の形にも悩み続けていたことが生前の言葉でも分かる。「誰も本当の僕など愛してはくれない。僕の名声、スターダムの全てと恋に落ちてるだけなんだ」

▼本当の自分を表現したい、自分とは何か-。そんな思いからだろうか。伸びやかで、繊細かつ力強い歌声は、悩みを抱える人に寄り添うように響くから不思議だ

▼マーキュリーさんは「決して満たされることのなかった青春の途中で、音楽、ロックがすべての苦悩を遠ざけてくれるものだった。僕なりに若者に贈りたい」とも述べている。激しくも優しく、軽快なサウンドは多くの人の背中を押し続けている。(赤嶺由紀子)