ハーモニーの楽しさを初めて教えてくれたのは「かえるのうた」ではないだろうか。みんなが主旋律を歌うのに、出だしを一小節ずらしただけでドミソの和音が響いてくる
▼本物もタイミングをずらして輪唱する。自分の声がかき消されないようにして縄張りを主張しているのだという(18日付本紙)。こちらの響きには、心地よさよりも自然界を生き抜こうとする厳しさがにじむ
▼卵からオタマジャクシ、そしてカエルに。しっぽが生えて引っ込んで、手足が生えて、えら呼吸から肺呼吸になって、と変身を繰り返す。なんとも不思議な存在だ
▼「卵がにょろにょろつぶつぶ」「つるつるぬめぬめのコレは保湿ですよ、肌保湿」。松橋利光さんの著書『嫌われ者たちのララバイ カエル』は、軽やかな言葉と極彩色の体を鮮やかに捉えた写真が楽しくて、愛情の深さがほほ笑ましい
▼国頭、大宜味、東の三村には、日本の在来種の約25パーセントが棲(す)んでいる。カエルの季語は春だけれども、冬場も活動する種が多くて、やんばるの森の豊かさを示している
▼ただ、多くの種が絶滅の危機にある。むやみに生息域を踏み荒らすのは避けたい。彼らがぴょんと跳ぶのは、必死に逃げるときで、ものすごく体力を使うのだという。カエルの「ど根性」を試す場面はできるだけ少ない方がいい。(具志堅学)