「きーちきらな、くるまやあったにとぅまらんどー(気をつけよう、車は急に止まらない)」-。糸満署具志頭駐在所の小渡錫幸(ようこう)巡査部長(58)はしまくとぅばで交通安全講話や広報の作成をする。「地域の皆さんと柔軟なコミュニケーションにつながる」。祖母から習ったしまくとぅば。漫談大会にも連続出場し会場を沸かせる。2年後には退職を控え、「沖縄全域で、しまくとぅばの安全講話をしたい」と笑う。(社会部・豊島鉄博)

高齢者向けの安全講話で、「金色夜叉」を熱演する小渡さん(右)=9日、八重瀬町志多伯・志多伯公民館

しまくとぅばを交えて作成した警察広報を手に笑顔を見せる小渡鍚幸巡査部長=9日、八重瀬町玻名城・糸満署具志頭駐在所

高齢者向けの安全講話で、「金色夜叉」を熱演する小渡さん(右)=9日、八重瀬町志多伯・志多伯公民館
しまくとぅばを交えて作成した警察広報を手に笑顔を見せる小渡鍚幸巡査部長=9日、八重瀬町玻名城・糸満署具志頭駐在所

 小渡さんは糸満市大里出身。養豚業で忙しい両親に代わり、祖母と一緒にいることが多かった。祖母と一緒に、5歳ごろから沖縄芝居を見に行き、すっかりファンに。「ベーシックなしまくとぅばを自然と学べた。県内のどこでも誰とでも話せる力が身に付いた」と振り返る。

 糸満高校3年時の文化祭。沖縄芝居の与座朝惟さんの「次男坊」をクラスで演じようと提案。与座さんに直談判し、演技を習った。見事、グランプリを獲得した。

 1981年、沖縄県警に採用された。機動隊や浦添署などで勤務。「より地域の人たちと触れ合いたい」と希望して、2012年に与那原署久手堅駐在所に赴任した。

 この時、高齢者向けの交通安全講話やしまくとぅばを使った広報配布を始めた。努力が認められ、15年には、地域の安全確保や犯人検挙に功績を残した警察官を表彰する「県民の警察官」に選ばれた。

 しまくとぅばを話すことで、いかつい警察官のイメージが和らぐという。お年寄りからは、不審者情報や子どもの深夜徘徊(はいかい)情報を教えてもらった。路上寝の人にも、しまくとぅばで呼び掛けた方が効果的という。

 9日、八重瀬町の志多伯公民館で、「志多伯老人会」の約20人に、交通安全や防犯について話した。「横断歩道から渡ってくみそーりよー(渡ってください)」「かんなじ鍵掛きてぃ、気に掛きてぃやーさい(必ず鍵を掛けて、気に掛けてください)」。しまくとぅばで高齢者に呼び掛けると、参加者も思わずうなずいた。

 講話の終盤、小渡さんが大好きという小那覇舞天さんの寸劇「金色夜叉」を披露。貫一お宮の話すしまくとぅばに、手をたたき、笑う人の姿もあった。

 参加者の神谷シゲさん(80)は「とても楽しかった。おまわりさんだと緊張するが、小渡さんはすごく身近だね」と話した。老人会の神谷明信(めいしん)会長(70)は「しまくとぅばだからこそ、年配のわれわれには分かりやすい。今後もしまくとぅば講話を続けて」と語った。

 今月20日、小渡さんは大舞台を控える。2016年の第1回から参加する「S-1沖縄しまくとぅば漫談大会」の出場だ。大会に備え、往年の沖縄芝居の記録を見て研究する。「しまくとぅばの面白さを再認識できる」。奥深いしまくとぅばによる笑いの世界に夢中だ。今年は「塩屋ぬぱーぱー」で挑戦する。

 しまくとぅばを大事にしてきた小渡さん。だが「あと20~30年後にはしまくとぅばは完全になくなっているのでは」と心配する。後輩の警察官には「しまくとぅばを使うことで住民との距離感も縮まる。身に付けては」と助言してきた。

 2年後には定年を迎える。「退職後は安全講話をしに沖縄全島を巡りたい」と笑顔を見せた。