サラリーマンものといって浮かぶのは、今なら「半沢直樹」の原作者池井戸潤さんという方が多いだろうか
▼その世界の妙味を教えてくれた作家は草分けの源氏鶏太さんだった。4こま漫画なら山科けいすけさん、コントなら公共放送NHKの「サラリーマンNEO」。どれも登場人物は格好悪いが愛(いと)おしく、万人が思い当たる節(ふし)を散りばめる含み笑いのセンスは抜群だ
▼そのNHKの籾井勝人会長が、「従軍慰安婦」や特定秘密保護法など五つの発言について国会で撤回、謝罪を繰り返した後、経営委員会では「私は大変な失言をしたのでしょうか」と開き直っていた
▼理事全員に日付が空欄の辞表も提出させていた。企業に例えれば、外部から来た本業を分かっていない社長が就任早々、生え抜き役員のクビはおれの手中にあるんだぞと締め付けたといったところか
▼下手なブラックジョークならぬブラック企業のような展開だ。問題発言を「個人的見解」として乗り切ろうとしたことや、国会と逆の態度でも経営委は容認したのだから問題は根深い
▼端(はな)から部下を信頼せぬトップが巨大メディア組織をまっとうに治められるはずがない。そういえばNEOでは、ミスして部下たちも辞表を出すと思い込んだ上司が一人だけ引くに引けなくなるコントがあったっけ。(与那嶺一枝)