阪神淡路大震災からきょうで24年。あの冬、避難所のテントが立ち並ぶ神戸市内の公園で「満月の夕(ゆうべ)」を聴いた。三線、アコーディオン、チンドン太鼓…。電気のない現場で生楽器の音色が優しく響いた

▼ロックバンド、ソウルフラワーユニオンのメンバーが連日、古い流行歌や民謡の出前ライブで被災者を元気づけていた。活動の中から生まれたと紹介し、歌い始めた新曲だった

▼〈たき火を囲む〉〈吐く息の白さが踊る〉。歌詞はいてつく避難所の情景を描く。〈悲しくてすべてを笑う〉はその場の誰もが共有する心情だった。多くの人が喪失感と先の見えない不安でぼうぜんとしていた震災直後の空気が切り取られている

▼20代の娘と幼い孫を亡くし、「人間悲しすぎたら涙も出えへん」が口癖だった女性が両手で顔を覆い、震えて聴いていた。〈解き放て いのちで笑え〉。演奏後、涙でぐしゃぐしゃの顔を上げ、「やっと泣けたわ」とため息をついて笑った

▼人々を励ました楽曲は多くの音楽家にカバーされ、東日本大震災や熊本地震でも歌い継がれた。県出身の平安隆さんがウチナーグチで歌ったバージョンは島唄の定番曲になった

▼震災は大きな悲しみをもたらしたが、助け合う人々の間には絆が芽生えた。そんな被災地から生まれた鎮魂歌を口ずさみながら、命の重さを考えたい。(田嶋正雄)