社説

社説[子連れ出勤推進]先にやるべき事がある

2019年1月21日 14:00

 政府が子育て世帯の支援策として、「子連れ出勤」を推進する方針を打ち出した。

 子どもの急な発熱や預け先の都合で仕事を休まざるを得なかったというのは、働く親たちからよく聞く悩みだ。しかしだからといって、子どもと一緒に仕事をする子連れ出勤が、今求められている支援なのか。

 かつて安倍政権が導入しようとした「女性手帳」や「3年間抱っこし放題での職場復帰支援」につながる、違和感を覚える政策である。

 宮腰光寛少子化対策担当相が、子連れ出勤で知られる授乳服メーカーを視察した後、取り組みを表明した。都道府県や市町村の「地域少子化対策重点推進交付金」を拡充し、国の補助率を2分の1から3分の2に引き上げ、後押しするという。

 子育てと仕事の両立を図る環境整備は急務とはいえ、ネット上では「仕事をしながら子どもは見られない」「保育園のように伸び伸び過ごさせてやれない」など、議論が巻き起こっている。

 授乳服を着て授乳しながら仕事をする子連れスタイルが定着している先の授乳服メーカーの取り組みは、柔軟で働き方の幅を広げている。

 ただそのハードルは高く、ビジネスの世界では現実的ではないとの受け止めが大半だ。

 子どもが安全に遊べるスペースの確保は。親が忙しい時に相手をしてくれる社員はいるのか。仕事の内容にも大きく左右され、職場の理解や同僚のサポートが必要になってくるからだ。

    ■    ■

 厚生労働省の2017年度雇用均等基本調査によると、女性の育児休業取得率は83・2%と高い。

 一方、出産を機に退職する女性は1年間で約20万人に上る。

 一見、仕事と育児を両立させる環境が整っているように見えるが、出産で退職せざるを得ない女性の何と多いことか。今でも小さな企業では、結婚・出産退職を慣例としている所が少なくない。

 待機児童解消も遅々として進まない。希望しても認可保育所などに入れない待機児童は、昨年4月時点で約2万人。特定の保育所を希望しているなどの理由で集計から除外された「潜在的な待機児童」は7万人近くいる。

 授乳の都合や、どうにもやりくりができない時の最後のセーフティーネットとして子連れ出勤を認める環境づくりは必要だとしても、先にやるべき事がある。

    ■    ■

 安倍政権の少子化対策は、なぜこうもズレているのだろう。

 若い女性向けに妊娠や出産の知識を広めようとした女性手帳は、国が人生の選択に口を挟むべきではない、と猛反発され方針転換に追い込まれた。

 3歳になるまで子育てに専念する3年間の育児休業は、負担が女性に集中するばかりか、女性のキャリア形成を妨げるとして不評を買った。

 そして子連れ出勤である。

 働く母親たちの思いから大きくズレる政策は、子育て支援の秘策にはなり得ない。

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