オリオンビールは23日、取締役会を開き、野村ホールディングス(HD)と米投資ファンドのカーライル・グループによる買収を受け入れることを決めた。

 買収の一報は県民に大きな衝撃をもって伝えられたが、オリオンの與那嶺清社長は「県民のビールであるというアイデンティティーを維持し、新たな歴史を築きたい」と語った。

 国内・県内ビール市場が縮小する中、生き残りをかけた新局面だ。

 野村HDが過半を出資する特別目的会社(SPC)を通じ、24日から株式公開買い付け(TOB)を始める。最終的に全株の取得を目指すといい、オリオンは完全子会社化される。

 野村側が描くのは、地域の中核企業に積極的に投資し収益力を高め、新規株式公開などで利益を最大化させるという青写真だ。

 一方のオリオンは、野村が持つ国内外のネットワーク、カーライルの経営強化支援のノウハウを活用し、海外への販路拡大などで企業価値を高めたいとする。

 新たな人材や経営手法を取り込んだ将来の成長に期待の声もある。ただビール生産を本業としない外部主導の経営に変わることで、ビール事業の継続や沖縄側の意思の反映が弱まるのではないかとの不安は消えない。

 取引先も多く、県経済への波及効果も大きい企業だけに、ブランド価値をどう維持し、高めていくのか。具体的な計画を県民に丁寧に説明すべきだ。

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 かつての県経済四天王の一人、具志堅宗精さんが1957年に設立した「沖縄ビール」が、オリオンビールの原点である。当初「シマーグヮー」と敬遠された県産品を、具志堅さんら社員が夜中までキャバレーなどを回って売り込んだ話は有名だ。

 復帰にあたり地場産業を守るため特別措置要請の先頭に立った具志堅さんは、「もし本土が勝手なことをすれば、共産党と組んででも抵抗する」(朝日新聞社編「沖縄報告」)と語った。

 2002年、オリオンが大手のアサヒビールと業務提携したのは、その酒税軽減の特別措置がなくなることをにらんでのことだった。 

 19年度税制改正大綱で軽減措置の10度目の延長が決まったが、「いつまで続けるのか」の声は強まっている。今回の買収容認には、再延長がないことも覚悟した上で、自力存続は容易ではないという判断も働いたのだろう。

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 人口減少などを背景に国内ビール大手の出荷量は14年連続で最低を更新。オリオンの県内出荷量も減少が続いている。もはや限られた市場で企業が成り立つ時代ではない。

 オリオン買収は大きな構図で見れば、グローバル化の波が県経済にも押し寄せていることを強く印象付ける。伝統産業や地場産業であっても逃れることはできない。

 グローバル化と沖縄の主体性という二つを新しい経営の中でどう調和させていくのか。新たなモデルをつくり出す時期にきている。