絶望を背負って生きる男たち特有の色気は、女の奥底に眠る何かを奮い立たせる。小林薫、柳楽優弥。この映画の中で影と色気を放つ男を魅力的に表現したこの2人の役者に、完全に持っていかれる。

「夜明け」の一場面

 小林薫が演じるのは、妻と息子を失った職人気質で無口な男・哲郎。再婚が決まったにもかかわらず、失った家族と暮らした家を離れることができない。一方、柳楽優弥演じる青年は、自殺に失敗し、哲郎に命を救われる。本名さえ明かさぬ青年に、哲郎は息子の姿を重ね、仕事を教え、家に住まわせる。

 完全にダメな2人。現実に目を向けることから逃げ、暗い闇の隅っこに2人でいて安心している。でも、私なら分かってあげられる。側にいてあげる。一緒に地獄に落ちようよ。この2人を見ていると、ついそんな言葉をかけたくなってしまう。(桜坂劇場・下地久美子)

◇桜坂劇場で上映中