社説

社説[勤労統計不正]真相究明にはほど遠い

2019年1月26日 08:46

 統計調査も不適切、不適切調査の内部調査も不適切。他の基幹統計からも次々に間違いや手続き上のミス…。

 不適切が不適切を呼ぶ「負の連鎖」で政府統計に対する信頼は完全に地に落ちてしまった。

 毎月勤労統計の不正問題を巡り、外部の弁護士などでつくる厚生労働省の特別監察委員会は22日、組織的な関与や隠蔽(いんぺい)を否定する報告書をまとめた。

 報告書の公表に合わせて根本匠厚労相は、鈴木俊彦事務次官ら関係職員の処分を発表した。

 問題が表面化してから約1カ月しかたっていない。組織の関与や動機など、肝心な点の調査が十分でないにもかかわらず、あまりにも早い幕引きである。

 国会審議に悪影響がないよう臭いものに早めにフタをしたと勘繰られても仕方のないような対応だ。

 聴取した31人のうち幹部職員20人については特別監察委員会の有識者が担当し、課長補佐級以下の11人に対しては身内の職員だけで事情を聞いたという。検証の中立性を疑わせるやり方だ。

 24日に開かれた国会の閉会中審査では与野党双方から「検証が不十分」だとの批判が噴出。職員同士で事情聴取していたケースについて、特別監察委員会メンバーが聴取をやり直すことになった。

 毎月勤労統計の不正調査問題を受け、総務省が56の基幹統計について点検したところ、22の統計に間違いや手続き上のミスがあることも分かった。

    ■    ■

 毎月勤労統計は、賃金や労働時間、雇用動向などの変化を把握するための重要な基幹統計で、従業員500人以上の事業所はすべて調べる決まりになっている。

 ところが東京都の分は、対象事業所約1400のうち約3分の1しか調べていなかった。

 2004年から15年にわたって続いた不適切な調査による過少給付は、延べ1973万人、額にして計537億5千万円にのぼる。

 雇用保険、労災保険、船員保険などのお金が過少に支給され続けていたのである。

 全数調査をすべきなのに抽出調査を行ったことは、統計法違反に当たる。担当者は不正を認識しながら漫然と踏襲し、局長級の職員も報告を受けていたが放置した、と特別監察委員会は指摘する。

 不正な手法を容認するマニュアルも存在していたというが、14年に該当部分が突然削除された。

    ■    ■

 政府は過少給付の対象者に対する不足分の追加給付を3月から実施する方針だ。

 だが、記録の破棄などで延べ1千万人以上の住所が分かっていないという。政府の統計不正によって不利益を受けた住民の救済は優先的に取り組むべき課題である。

 野党は統計の誤りによって賃金が変動したことを「アベノミクス偽装」だと指摘し、国会で政府を追及する構えだ。統計に対する職員の認識不足も明らかになった。

 このまま幕引きを図ることはとうてい許されない。

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