「亡くなってから大人にいろんなことを教えてくれるんです」。以前、虐待死した子らのケースを学ぶ研修会を取材した際の医師の言葉が忘れられない。遺体に残る傷跡が暴行を物語る。耳をふさぎたくなる話だったが、虐待の実態を直視する機会にもなった

▼ただ、残念ながら虐待死は後を絶たない。千葉県の小学4年生栗原心愛(みあ)さん(10)が父親から冷水をかけられるなどして自宅浴室で死亡した事件。悲惨な事件に胸が痛む。なぜ救えなかったのか

▼心愛さんが学校のアンケートで「父親からいじめを受けた」と訴えたことをきっかけに、児童相談所が一時保護した。だが、保護の解除後は、児相や学校側は自宅を訪問しておらず、虐待リスクへの対応は継続されていなかった

▼児相は対応の不足を認めているが、あまりにも無責任すぎないか。学校側も長期欠席について、家庭訪問で確認することはなく、結果的にリスクは見過ごされてしまった

▼自宅近くでは怒鳴り声や泣き叫ぶ声も頻繁に聞かれたという。多くのSOSがあったにもかかわらず、この異常に気づいてあげられなかったのか。悔やまれてならない

▼虐待の背景や原因は多岐にわたる。発見や解決に難しさがあるからこそ、行政や支援機関、地域などのネットワークが重要となる。子の命を守るのは社会の目だ。(赤嶺由紀子)