沖縄県北大東村に初の漁港が完成し、2日に開港する。漁港がない島ではこれまで、漁船がクレーンで陸揚げされる光景が島の風物詩だった。漁ができるのは1日6時間以内、2トン以下の小型漁船しか持てないなど、漁師は漁を制限され、目の前に国内有数の良好な漁場がありながら、悔しい思いをしてきた。「悲願」だった漁港は昨年11月に一部供用開始し、漁師たちは今、自由に安全に海に出られるようになった。島にはUターン、Iターンする若者が現れている。(南部報道部・高崎園子)

漁港開港で自由に漁ができるようになり「楽しみしかない」と笑顔で話す(左から)村水産組合の知花実組合長、垣沼翔太さん、知花応樹さん=30日、南大東漁港(北大東地区)

2月2日に開港式が開かれる南大東漁港(北大東地区)

北大東島と南大東漁港(北大東地区)

漁港開港で自由に漁ができるようになり「楽しみしかない」と笑顔で話す(左から)村水産組合の知花実組合長、垣沼翔太さん、知花応樹さん=30日、南大東漁港(北大東地区) 2月2日に開港式が開かれる南大東漁港(北大東地区) 北大東島と南大東漁港(北大東地区)

安全・自由な漁へ船出

 「外から見れば島の風物詩なんだろうけど、自分たちにとっては苦痛だった」。北大東村水産組合長の知花実さん(54)は苦笑いしながらそう話した。

 島の海域は荒く、切り立った岩壁を風が打ち付け、天気の悪い日はクレーンで持ち上げられた漁船が大きく揺れる。波でロープが切れ、海に落ちたこともある。「本当に怖い。朝出港したら、帰りの海は静かだろうかと心配ばかりだった」(知花さん)。

 クレーンを使っての出港は午前6時、帰港は正午と決められ、漁師は、魚の群れを見つけてこれから、というときも、島に戻らなければならなかった。

 重量制限があるため小型漁船に限られ、少しでも波が高いと出港できない。マグロ、サワラ、ソデイカなどが取れる豊かな漁場で、島外の大型漁船が漁をするのを横目に「指をくわえて見ているしかない」状態だった。

 知花さんの長男、応樹(ひろき)さん(26)は那覇市から島に戻り、2年前から専業の漁師として独り立ちしている。

 Uターンの背中を押したのが漁港の開港だ。「自由に船を出し、粘って漁ができるようになった。何が釣れるだろうと楽しみで、早く明日になればいいのにと思う」と笑顔を見せる。

 応樹さんの沖縄水産高校の同級生、垣沼翔太さん(26)は那覇市からのIターンだ。おととし1月、妻や子どもと北大東に移り住んだ。高校時代から島を訪れ「よく釣れる海だと思っていた。島でずっと漁師としてやっていきたい」と語る。

 漁港は周辺海域で操業する漁船の避難港として、国、県が整備。村は漁業振興の好機と、補助事業を利用しながら、独自に、魚の鮮度を保つための製氷施設や加工所を整備した。

 4トン級の漁船を昨年度から5年間、毎年1隻ずつ購入し、水産組合に貸与。Iターンなどの漁師のために宿舎も整備し、3月に完成予定だ。村経済課の平良栄二課長は「漁獲量が増えれば収入が増え、漁業だけで生活できる漁師も増える。島の水産業をこれからどんどん伸ばしていきたい」と意気込みを語った。