社説

社説[広がる統計不正]厚労相の責任免れない

2019年2月3日 08:33

 底なしの様相を見せる「統計不正」。巨大官庁のガバナンス不全は目を覆うばかりだ。

 「毎月勤労統計」に続いて不正が発覚した「賃金構造基本統計」を巡り、厚生労働省が隠蔽(いんぺい)を認める会見を行った。

 担当室長が「郵送調査」は不正だと認識しながら、総務省の一斉点検に際し「報告しない」判断をしたという。

 賃金構造基本統計は国が特に重視する基幹統計で、都道府県労働局や労働基準監督署が雇った調査員が企業を訪問して調べることになっている。しかし実際は、ほとんどの企業へ調査票を郵送し、調査員は電話での照会や督促に当たっていた。

 担当部署が訪問調査と明記したマニュアルを各地の労働局に送っていたにもかかわらず、末端組織まで不正に手を染める処理が漫然と続けられていたのだ。

 遅くとも2006年から始まっていたというから、その根は深い。

 基幹統計に関しては、統計を所管し監督する総務省の「小売物価統計」でも不正が明らかになっている。

 店舗を訪問して商品やサービスの価格を調べる統計で、大阪府が任命した調査員が実際には訪問していないのに価格を報告する不適切な事務処理をしていた。

 総務省は「調査員の問題」と説明するが、統計の信頼性を揺るがす事態である。

 単なる不正の飛び火とは思えない。「無責任の体系」の背後にあるのは何なのか。

    ■    ■

 不正の発端となった毎月勤労統計問題では、原因究明のために設置された特別監察委員会の調査やり直しが決まっている。

 第三者委員会といいながら実際は職員による「身内調査」がほとんどで、幹部が同席し質問するケースもあるなど、組織的隠蔽を否定する根拠としての中立性を欠いていたからだ。

 勤労統計不正を受け野党が試算したところ、昨年の実質賃金の伸び率は大半がマイナスになった。賃金を高く見せかける「アベノミクス偽装」と指摘する。

 国会で野党が根本匠厚労相の罷免を求めたのに対し安倍晋三首相は「事実を把握した後、必要な指示を行い、全力で対応に当たった」と擁護した。

 19年度予算案の閣議決定前に不正の報告を受けていたのに、決定を黙認したのは厚労相だ。監察委が調査の全面的やり直しを余儀なくされたのも前代未聞の大失態である。    ■    ■

 統計不正問題を巡っては、毎月勤労統計を担当していた統計管理官と、賃金構造基本統計の担当責任者である政策統括官が既に更迭されている。

 国会では4日から衆院予算委員会が始まり、この問題が議論される。

 担当官僚の更迭で済むような話ではない。さらに更迭したから証言できないというようなことになれば、「証人隠し」と受け取られるだろう。

 根本氏の閣僚辞任を含め、政治家の責任が厳しく問われるべきだ。

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