千葉県野田市の小4、栗原心愛(みあ)さん(10)が自宅浴室で死亡し、虐待が疑われている事件で、転居前に虐待情報を得ていた沖縄県糸満市の対応は十分だったか。川崎市で児童相談所3カ所の業務相談(スーパービジョン)を担当する長谷川俊雄・白梅学園大教授(家族ソーシャルワーク論)に聞いた。(聞き手=南部報道部・堀川幸太郎)

長谷川俊雄教授

 -糸満市の対応は。

 「不十分。親族の訴えた虐待やDVの有無を本人に確かめていないのが致命的欠陥だ。両親、親族の情報収集も足りない。野田市で亡くなったが、情報収集さえできていれば転居前に守れた可能性がある」

 -学校の対応は。

 「学校で心愛さんをどちらが引き取るか父(容疑者)と親族が争った。親族間で子どもの居場所を争う事態に疑問を覚え、現場に即した対応方法を児相に尋ねるべきだ。学校は事実解明機関ではない。手引で学ぶだけよりも実践的に対処できたと考えられる。親権者の父に心愛さんを渡したのは責任を抱え込みたくない学校の都合だ」

 -児相への連絡は一般的か。

 「一般的なことだ。誤解があるが児相は『児童虐待相談所』ではない。貧困、障がいなど子どもを巡る養育問題の相談・提言もする。泣き叫ぶ子の声を聞いた一般人と同様『189(いち・はや・く)』に電話すれば最寄りの児相につながる。国の支援システムだ」

 -市は学校に見守りを頼んだ。

 「要保護児童対策地域協議会(要対協)でもよく出る言葉だが、具体的に誰が何を見るか、何を守るかを押さえて共有することが支援態勢の構築。役割分担の指示や調整がない『見守り』は心掛けにすぎず、市や学校による問題の先送りとなる危険性がある」

 「教育委員会による虐待リスク管理の具体的内容を伴う研修はないのが現状だ。国の虐待死事件分析を見ると学校の抱え込みや非協力という要因もある。学校と児相との連携は難しいことが多い。学校運営の不十分さが露呈することを恐れるからだ。学校であるために匿名通報できず、親の反感や批判を受けるときもある。教育と児童福祉の機能は似て見えるが、子ども観や支援観が異なることがある」

 -どうすべきか。

 「今回、糸満市は住民の家族に虐待、DVがあっても見抜けず、守り切れないことが明らかになった。市民は不安に感じているだろう。同じ課題に直面する自治体も多い。市民への説明責任を果たすために第三者検証委員会の設置を市長や議会が提案すべきだ。リスク管理、不十分な連携をした担当部署だけの責任と考えるならば、市長も議会も責任放棄と言えるだろう」

 「要対協は機能不全だったとも考えられる既存システムの一部であり、市が第三者と見なしているのは違う。現場感覚の伴った知見を持つ有識者らが独立性を担保した中で検証し、変革する必要がある。でないと自ら訴えられない危機に直面する子どもを守ることができない」