やんばるの山が刻々と明るさを増している。黄緑色の若々しい葉や、新芽が顔を出したばかりの木々も増え、緑のグラデーションが鮮明になってきた。春はすぐそこだ

▼昨年の今ごろ、政府は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けて県に埋め立て申請書を提出した。その3月22日を皮切りに、国や県、名護市が移設をめぐり攻防を繰り広げた

▼今年1月、反対派の稲嶺進市長が当選し、市内にはやっと落ち着きが戻った。だが政府の「移設ありき」の姿勢は変わらず、嵐の前の静けさかと懸念は尽きない

▼辺野古沿岸部の調査は4月以降に延びた。10年前のボーリング調査でも海上で反対派とせめぎ合ったが、前回との違いは、「移設反対」の輪がじわじわと世界に広がってきたことだ

▼カナダやスウェーデン、欧州連合(EU)大使が「名護の思いを聞きたい」と稲嶺市長を訪問。ネットの反対署名は1万人を超えた。人権、自然、環境問題と多角的な視点で日本の小さな島に関心を寄せている

▼先日の辺野古沖の潜水調査では、順調に成長するサンゴも確認された。「温暖化による壊滅的な白化から、回復しつつある」とダイバー。人間の争いをよそに、山も海も、彼らの生を謳歌(おうか)している。それを破壊してまで新たな基地は本当に必要だろうか。(儀間多美子)