社説

社説[子どもの虐待防止]命救う通告ためらうな

2019年2月5日 07:17

 千葉県野田市の小学4年生、栗原心愛(みあ)さんが自宅浴室で死亡し虐待が疑われている事件で、千葉県警は父親に続き、母親も傷害容疑で逮捕した。

 事件当日、父親が娘に冷水シャワーを掛けるといった暴行を加えた際、黙認するなどした疑いが持たれている。自宅にいながら制止しなかったことが、共謀に当たると判断された。 

 逮捕前の任意聴取では、娘に対する夫の暴行を「ずっと立たせるのはやめて」など制止したと話しており、「なぜわが子を」との思いが消えない。

 ただ母親自身が父親からドメスティックバイオレンス(DV)を受けていたとの情報もあり、関与を調べているという。

 DVと児童虐待が同時に進み、両者が密接に関連して深刻化するケースは少なくない。

 事件を巡っては、2017年11月に心愛さんが「お父さんにぼう力を受けています。先生、どうにかできませんか」と書いた学校アンケートのコピーを、野田市教育委員会が父親に渡したことが判明している。

 学校や教師を信頼して発したSOSだっただろうに、言葉を失う対応だ。

 父親の威圧的な態度に追い込まれたという弁明は、子どもを守るという使命から大きくかけ離れている。

 教委のこの判断が虐待リスクを高めた可能性があり、適切に対応していればと悔やまれてならない。

    ■    ■

 一家が野田市に転居する前の17年8月まで住んでいた糸満市の対応もふに落ちない点が多い。

 親族から、父親が娘を「どう喝」し、母親がDV被害に遭っているとの相談が寄せられていたにもかかわらず、家庭訪問し子どもの安全を確認することも、心愛さん本人から話を聞くこともしていない。

 父親が家庭訪問の日程を2度もキャンセルしたため会えなかったというが、だからこそリスクを高く評価すべきだった。学校側は「手足など見える範囲にあざはなかった」と説明するが、どう喝や面前DVも虐待であり軽いというものではない。

 なぜ積極的に関わらなかったのか。児童相談所との連携が進まなかった理由は。転居先の関係機関との引き継ぎの問題も残る。第三者による検証が不可欠だ。 

    ■    ■

 児童虐待防止法は、虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに児童相談所などに通告しなければならないと規定する。さらに子どもと接することの多い教師や医師らには早期発見義務が課せられている。

 全国の児童相談所が17年度に対応した児童虐待の件数は13万3700件余り。うち約半数は警察からの通告で、学校経由は7%にとどまっている。

 隣近所のつながりが希薄化する中、学校は児童虐待を最も発見しやすい場所の一つである。虐待の疑いがあると思った時は、ためらわずに通告してほしい。

 

 
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