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木村草太の憲法の新手(97)県民投票改正条例が成立 各選択肢の意味を明確に

2019年2月3日 09:50
木村 草太
木村 草太(きむら そうた)
憲法学者/首都大学東京教授  

 1980年横浜市生まれ。2003年東京大学法学部卒業し、同年から同大学法学政治学研究科助手。2006年首都大学東京准教授、16年から教授。法科大学院の講義をまとめた「憲法の急所」(羽鳥書店)は「東京大学生協で最も売れている本」「全法科大学院生必読書」と話題となった。主な著書に「憲法の創造力」(NHK出版新書)「テレビが伝えない憲法の話」(PHP新書)「未完の憲法」(奥平康弘氏と共著、潮出版社)など。
ブログは「木村草太の力戦憲法」http://blog.goo.ne.jp/kimkimlr
ツイッターは@SotaKimura

 1月29日、沖縄県議会で、「賛成」「反対」に加え、「どちらでもない」との選択肢を設ける県民投票条例改正が成立した。これを受け、投票事務拒否を表明していた五つの市でも、県民投票が実施される見込みとなった。全県実施となり、県民の投票権が確保されたのは大変好ましい。ただ、幾つか注意すべき点もある。

 第一に、投票において「どちらでもない」との選択肢が許されるのは、県民投票の特性によるものだ。国政選挙、地方選挙や憲法改正国民投票では、そのような選択肢を設けることは許されない。

 法的に見たとき、選挙や憲法改正国民投票の場面では、各有権者は、議員選定権限や憲法改正権を担う「権力者」としての決断を求められる。ここでは、「どちらでもない」などと、決定を先送りする選択肢を設けるのは不適切だ。

 これに対し、今回の県民投票を含め、いわゆる住民投票は、行政機関(今回は県知事)が権限行使する際の参考として、住民の意識を調査するものだ。つまり、選挙よりも、パブリックコメントやデモ行進に近く、決断責任は、あくまで県知事にある。それゆえ、「どちらでもない」との消極的選択も許された。そう理解すべきだろう。

 第二に、県議会は、今回の経緯が、「違憲・違法の投票権侵害行為に譲歩した前例」と位置付けられないように努力せねばならない。

 これまで指摘してきたように、投票事務拒否は、憲法が保障する平等権や意見表明権の侵害だ。もしも選択肢追加によって、もともとの県民投票よりも不適切なものになったのであれば、それは「違憲行為への屈服」であり、許されない。そうだとすれば、今回の条例改正は、「交渉の中で、よりよい選択肢の在り方が発見された事例」として説明されなくてはならない。そのためには、「どちらでもない」という選択肢を加えた方が、元の県民投票よりよいものになる理由を、県議会は説明すべきだろう。

 第三に、投票前に「各選択肢の意味」を確定する必要がある。改正県民投票条例10条は、県知事は投票結果を尊重しなければならない、と定める。もしも、「どちらでもない」との投票が多くなった場合、どうすれば県知事は投票結果を尊重したことになるのか。この選択肢の示す住民の意思はあまりに不明確だ。

 これを曖昧なままにしておくと、工事反対派は「積極的賛成でないのだから反対の一種だ」と主張し、逆に、国は「反対多数でないのだから、工事を進めて良いのが民意だ」と主張するといった混乱を招くだろう。こうした事態を避けるには、事前に「どちらでもない」の意味を明確にしておくべきではないか。そうすれば、投票権者は意味を十分に理解して投票でき、県知事も解釈に戸惑う必要はなくなる。

 この点、「どちらでもない」の意味の説明責任は、議決した沖縄県議会にある。賛成・反対以外の選択肢を設けるべきだと主張した自民党・公明党も含め、県民に対してしっかりと説明すべきではないか。また、玉城デニー知事は、そうした説明を踏まえ、玉城氏自身がそれをどう受け止めるつもりかについて、声明を出しておくべきだろう。(首都大学東京教授、憲法学者)

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