インターネットの匿名掲示板に投稿されたヘイトスピーチが、名誉毀損(きそん)罪に当たるとして処罰されていたことが分かった。

 ネット上のヘイトスピーチに対して侮辱罪が適用されたケースはあるが、より罰則が重い名誉毀損罪は全国でも初めてだ。

 事の経過はこうである。

 石垣市の在日韓国人の男性(35)を誹謗中傷し名誉を傷つけたとして石垣区検は1月15日と23日に、男性2人をそれぞれ名誉毀損罪で略式起訴した。

 石垣簡裁は1月17日、24日、2人にいずれも罰金10万円の略式命令を出した。

 被害者の男性はネット掲示板「2ちゃんねる」で、「在日朝鮮人、詐欺師、借金まみれ」「在日だから当然か」などと、名指しで民族差別をあおる誹謗中傷を受けた。

 自営業を営む男性は、会社名まで書かれ、収入が大幅に減ったという。

 2016年2月、名誉毀損の疑いで刑事告訴したが、八重山署は昨年11月、被疑者不詳のまま那覇地検石垣支部に書類送検した。

 ヘイト投稿は、ネットの匿名性を隠れみのにしているだけに、発信者の特定には壁が立ちはだかる。石垣区検は男2人を特定し、略式起訴にこぎつけたのである。

 今回の司法判断は、二つの点で大きな意味を持つ。

 区検が匿名の壁をこじ開けて発信者を特定し、刑事事件として司法の場に持ち込んだこと。簡裁が名誉毀損罪を適用して被害者救済に新たな道を開いたこと、である。

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 ヘイトスピーチ対策法は、16年6月に施行された。被害者男性が警察に告訴した4カ月後のことだ。同法は国や地方公共団体に対し、「不当な差別的言動の解消に向けた取り組み」を求めている。対策法ができたことで市民団体の取り組みが全国で活発化し、条例制定の動きも広がった。

 だが、禁止規定や罰則規定を設けていない。理念法の限界がさまざまな形で浮上している。

 被害者救済に時間や労力がかかりすぎるのは、今回のケースでもあきらかだ。

 在日コリアンや差別問題を扱う弁護士らは、ヘイトスピーチそのものは決して減っていない、と指摘する。

 ヘイトをなくしてほしい、と切実な思いから声を上げた人びとが、攻撃のターゲットにされ、ネット上で「日本がいやなら出て行け」などと排外的な言葉を浴びせられる事例もある。

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 国連の人種差別撤廃委員会は昨年8月、日本政府にヘイト対策の強化を勧告した。

 政府は「表現の自由」を理由に、ヘイトスピーチの規制強化には慎重だ。

 「表現の自由」がもっとも重要な権利であることは論をまたないが、だからと言って、ヘイトスピーチを放置することは許されない。

 人間としての尊厳をおとしめ、被害者を不安に陥れ、苦痛を与えるのは、暴力そのものであり違法行為である。

 日韓関係が悪化しているときだけになおさら、「感情の暴走」には注意したい。