この冬公開された映画「こんな夜更けにバナナかよ」は進行性筋ジストロフィーを患いながら、自立生活を送る重度身体障がい者と介助ボランティアの交流を描く。2002年に42歳で亡くなった札幌市の鹿野靖明さんの実話を基にしている

▼24時間365日介助が必要だが、遠慮や我慢をせず自由に生きる主人公を俳優の大泉洋さんが好演する。題名は真夜中に突然「バナナ食べたい」と言い出した際、介助者がぼやいた一言だ

▼美談ではない。わがままに耐えかねた新人ボランティアが「何様?」「してやってるんだよ」と言い放つ場面がある。見る者の意識の深層が映しだされるようでドキリとする

▼障がい者が生きたいように生きたらだめなのか。命懸けで人生を楽しむ姿に触発され、周囲が徐々に変わっていく

▼原作のノンフィクションを書いた渡辺一史さんは新著「なぜ人と人は支え合うのか」で、16年に相模原市で起きた障がい者施設殺傷事件と向き合った。被告人や同調者の「障がい者なんていなくなればいい」との主張に対し、「誰もが支え、支えられて生きている」と反論する。どちらか一方の人などいないのだと

▼自立を求める声の高まりが孤立を深めてはいないか。人は誰かの助けを借り、迷惑を掛け合いながら生きる。寬容と多様性が当たり前の社会にしていきたい。(田嶋正雄)