芸術と地域の人々をどう結び付けるか。それを熱く、強く、考えている人だった。7日に亡くなった作曲家の中村透さん。誰もが豊かで充実した人生を楽しむための芸術の役割を、芸能担当記者の私に機会あるたびに語ってくれた

▼苦い思い出がある。12年前、シュガーホールについて中村さんが書いた原稿の束を見て、「長いですね」と思わず口にした時のことだ。「読んでないのに、ひどいね」としかられた

▼佐敷町(現南城市)シュガーホールに関わってきた思いや、公共ホールの存在意義が論理的かつ情熱的に書きつづられていた。掲載スペースの都合で削るのがもったいない内容。分量だけで価値を測った自分の見識のなさを恥じた

▼クラシックと琉球芸能が互いの価値を高める試み、地域の伝統を支え、新たな価値を創出する場の必要性。芸能担当を離れても、会うとそんな話を聞かせてくれた

▼流通し消費されるエンターテインメント芸術と、人を結び地域の自尊心や共感を育んできた伝統芸術の役割の違いを訴えていた。文化行政には、費用対効果などの実利だけでなく、「持続可能な文化環境の整備こそ重要だ」とも

▼沖縄の芸術文化の未来を示す水先案内人がまた1人旅立った。2日には若手琉球器楽奏者のための新曲が披露されたばかり。中村さんの新作が、もう聴けないのは寂しい。(玉城淳)