年明けの日曜日、小雨が降る肌寒い昼下がりだった。名護市街地の交差点で女の子が1人、赤信号を無視して横断歩道を渡っていく。幼すぎて信号の意味さえ分からないのだろう。いつ左右から車が突っ込んで来てもおかしくない

▼自分の車を止め、走って追いかけ、近くの交番まで一緒に行った。半袖半ズボンで、小刻みに震えている。「お母さんは?」と尋ねると、「おうちにいる」。か細い声と笑み。握り締めた小さな手から100円玉が二つ、机の上にこぼれ落ちた

▼警察官に引き継いで後から聞いた話。女の子は3歳になったばかりだった。自宅に連れていくと親は不在で、成人した姉がいた。「よく買い物に行かせてる。平気だよ」と答えたという

▼あの交差点を通りかかるたび、あたりを見回している。栗原心愛(みあ)さんが亡くなった後は特に

▼一家が暮らしていた糸満市と千葉県野田市の学校、行政の対応が批判されている。検証はとても大切だ。でも、家庭や学校からこぼれ落ちる全ての小さい命をセーフティーネットで受け止めるには、それで十分ではない

▼ネットを編むのは学校や行政だけでなく、私たち一人一人の大人だ。小さなことしかできないかもしれない。それでも、1センチでも、先へ手を伸ばそう。その先にある手を握って、ネットの穴を極限まで小さくしよう。(阿部岳