社説

社説[統計不正問題]国会の真価が問われる

2019年2月11日 08:08

 厚生労働省の統計不正問題を巡り、衆院予算委員会は統計部門の最高責任者だった大西康之元政策統括官を参考人招致した。

 大西氏は、総務省の統計一斉点検で賃金構造基本統計の不正を報告しなかったとして1日に更迭された。

 野党は統計不正の解明に欠かせないとして参考人招致を繰り返し要求していたが、与党は更迭を理由に拒否。「証人隠し」と批判する野党に対し、2019年度予算案の審議入りと引き換えに応じた経緯がある。

 質疑で大西氏は、毎月勤労統計の不正について「昨年12月13日に初めて知った」と答弁。5日後の18日に厚労審議官らへ部下を通じて伝え、翌19日には大西氏が事務次官らに自ら報告したという。新事実はこれだけである。

 根本匠厚労相は20日に報告を受けたが公表せず、厚労省も不正を伏せたまま10月分の確報値を発表。新年度予算案も閣議決定していたことはすでに明らかになっている。

 大西氏から上司への報告が5日も遅れたのはなぜなのか。厚労省の機能不全ぶりに驚くほかないが、組織的な隠蔽(いんぺい)が行われなかったのか、核心部分は不明のままだ。

 大西氏は真相究明のキーマンと位置付けられていたが、それには程遠い内容である。野党の追及も、突っ込みが足りないと言わざるを得ない。

 理解できないのは、自民、公明両党が大西氏に質問しなかったことである。これでは与党が真相究明に後ろ向きと受け取られても仕方がない。

    ■    ■

 毎月勤労統計不正の調査をし「職員に隠蔽の意図はなかった」と結論付けた特別監察委員会の樋口美雄委員長も参考人招致された。

 だが、樋口氏は衆院予算委で労働政策研究・研修機構理事長として招致されていることを理由に、ことごとく答弁を回避した。与党が同機構理事長の立場を条件に応じたからだ。何のための招致かわからず、とても納得できない。

 同機構は厚労省の外郭団体で国から補助金を受けている。中立・客観的な第三者委員会といえるのかどうか。

 厚労省職員による内部調査が約7割に上り、幹部が同席するケースもあった。本来なら厚労省から独立した第三者委が調べるのが筋である。

 不正調査が長年続いていることを考えれば、歴代の統計責任者らを参考人招致の対象にすべきだ。集中審議や特別委員会の設置が必要だろう。

    ■    ■

 共同通信社が今月実施した全国世論調査で政府の対応について「不十分だ」との回答が83・1%に上った。統計への信頼が失墜していることを政府は深刻に受け止めなければならない。

 日本統計学会、日本経済学会も相次いで声明を発表。政府が対応をとらなければ「日本の経済統計全般に対する信頼性はさらに損なわれる」などと警鐘を鳴らしている。

 あらゆる政策に影響を与える統計不正は国の根幹を揺るがしかねない問題だ。国会の責務は行政を監視することにある。真相究明に与党も野党もないはずだ。国会の真価が問われる時である。

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