「ようやく」という言葉がふさわしいのかもしれない。 名護市辺野古の新基地建設を巡る県民投票が、24日の投開票に向け、14日、告示された。
国が進めている埋め立ての賛否を問うもので、「賛成」「反対」「どちらでもない」の三つの選択肢の中から、いずれかに「○」を記入する。
1996年に実施された県民投票は、米軍基地の整理・縮小と日米地位協定見直しの賛否を問うものだった。
辺野古埋め立ての賛否を問う今回は、結果次第では、沖縄の民意を反映した「実質的な負担軽減」を求める声が国内外で高まる可能性がある。 政府は「辺野古が唯一の選択肢」だと繰り返し主張してきた。辺野古では今も、連日のように土砂投入などの埋め立て作業が続いている。
今さら法的拘束力もない県民投票を実施する必要がどこにあるのか-そんな声は今もある。だが、県民投票を実施する最大の理由は、まさにそこにある。
「他に選択肢がない」という言い方は、政策決定によってもっとも影響を受ける者の声を押しつぶし、上から目線で「これに従え」と命じているのに等しい。実際、選挙で示された民意はずっと無視され続けてきた。
県民投票は、戦後74年にわたる基地優先政策が招いたいびつな現実を問い直す試みでもある。
軟弱地盤の改良工事のため、当初の予定を大幅に上回る工期と建設経費がかかることも明らかになってきた。状況が変わったのだ。
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米軍普天間飛行場の一日も早い危険性除去をどう実現すべきか。辺野古の自然環境は果たして保全されるのか。
埋め立ての賛否を考える上で避けて通れないのは、この二つの論点である。
自民党県連や公明党県本は、積極的に運動することはせず静観の構えで臨むという。
政党としての立ち位置を明確にするためにも自公両党にはそれぞれの考えを示し、積極的に県民投票にかかわってほしい。
選択肢が2択から3択に変わったのは、与野党がぎりぎりの段階で歩み寄った結果である。
3択になったことで「どちらでもない」という選択肢の結果をどう評価するか、という新たな難題を抱えることになった。
「賛成」よりも「反対」よりも「どちらでもない」の選択肢が多かった場合、玉城デニー知事は、後ろ盾を失うことになる。知事にとっては大きな痛手だ。
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県民投票に法的な拘束力はない。どのような結果になっても計画通り工事を進める、というのが政府の考えである。
しかし、「反対」が多数を占めた場合、玉城知事は辺野古反対を推し進める強力な根拠を得ることになる。
県民投票によって、疑う余地のない形で沖縄の民意が示されれば国内世論に変化が生じるのは確実だ。
政府が辺野古での工事を強行しているのは、県民投票を意識している現れでもある。