わが国での疾患別死因を見ると、悪性新生物(がん)は約30%を占め、次いで心疾患、肺炎と続きます。がんの部位別の死亡率(人口10万対)で咽頭を含む口腔(こうくう)は男性8・6%、女性3・3%といわれています。

イラスト・いらすとや

 口腔がんは患者自身の目で見ることができる部位であるにもかかわらず、治療の開始が遅れ、不幸な結果となることがしばしばみられます。一命をとりとめたとしても発音障害、嚥下(えんげ)障害、審美障害などを残すこととなります。

 一般に口腔がんの治療成績(5年生存率)は30~70%。早期がん(転移を認めない局所に限局したがん)では医療機関で治療法も異なり、一概には言えませんが、手術を主体とした治療法で5年生存率は80%を超えるとの報告もあります。早く見つけて治療を始めることで治癒するといわれています。本稿では、日頃より気を付けていただきたい粘膜疾患についてお伝えします。

 口内炎で最も頻度の高いものにアフタ性口内炎があります。周囲が赤く腫れ、内部が黄色い楕円(だえん)形の痛みを伴う小潰瘍で、通常、ステロイド軟こうを塗ることにより1週間から10日程度で治癒します。

 アフタが大きく、潰瘍が深い場合には治癒までに時間を要し、また口腔がんと似たような所見を呈することがあり、専門医での鑑別診断が必要となります。

 歯の崩壊が著しいむし歯や不適合な金属冠、不適合な義歯などによる慢性的な機械的刺激により生じる褥瘡(じょくそう)性潰瘍があります。アフタ性口内炎と同様に潰瘍は痛みを伴う楕円形、あるいは不定形で、周辺は発赤し、浮腫状の所見を示します。

 本症は一般に原因を取り除くこと(むし歯の処置、不適合な金属冠の鋭利な部分の研磨や金属冠の除去、不適合な義歯の調整)により症状が改善、治癒することが多く、これらのことから口腔がんかどうか、鑑別します。お口の中にわずかでも違和感を認める場合には、かかりつけの歯科医院を受診しましょう。(金城尚典 歯科口腔外科クリニック)