推敲(すいこう)を繰り返し、使う言葉にこだわった結果が賞につながった-。沖縄市文化協会が主催する「文化の窓エッセイ賞」で、ことし大賞を受けた女性(76)の話が意外だった。文章を書く経験は浅くないのに初心者のように聞こえたからだ

▼協会の文芸誌「文化の窓」が創刊されたのは1978年で女性の投稿歴は29年を数える。受賞作が掲載される「エッセイ賞」では過去2回佳作をとった。これだけのキャリアがありながら、なぜ今になって新境地に至ったのか

▼疑問を解くかぎは協会の新たな試みにあった。市在住の小説家、崎山多美さん(64)の呼び掛けで昨年、初めて講座が開かれた。書きたい意欲、メッセージはあるのにもったいない、と審査員から講師の側に回った

▼どうしたら読み手に説得力を与えられるか。伝えるための言葉選び、生活の実感を表すこと、等身大であること…。希望者には一対一で話し合いも重ねた

▼添削によって世界が広がったという好反応もあれば、指摘に異論を唱える人もいたが、どちらも楽しかったという。市民には文章を書く喜びと活字になることへの励みがあった

▼県内では特に年配の人に、沖縄の歴史と自らを重ね合わせて書き記したい意欲を持つ人が多いと崎山さん。良い作品を読み、文章を磨く手助けによって文化の裾野は広がる。(溝井洋輔)