大阪出身の琉球舞踊家、福島千枝さん(34)は舞台を通じて、しまくとぅばと向き合う。10代から研さんを積む舞踊で琉球古典音楽の歌詞を学び、県立芸術大学時代に出会った組踊では唱えを身に染み込ませ、最近はアドリブが応酬する沖縄芝居の舞台に立つ。「ウチナーンチュの方々の心にダイレクトに届く言葉」と語る。(学芸部・松田興平)

「中城情話」でヒロインのウサ小を演じる福島千枝さん(左)。右は阿兄小役の糸数きよしさん=1月20日、南風原町・津嘉山地域振興資料館(提供)

舞台を通じて学んだしまくとぅばへの思いを語る琉球舞踊家の福島千枝さん=那覇市・沖縄タイムス社

しまくとぅばを共通語訳とともに五十音順でまとめた福島千枝さんのノート

「中城情話」でヒロインのウサ小を演じる福島千枝さん(左)。右は阿兄小役の糸数きよしさん=1月20日、南風原町・津嘉山地域振興資料館(提供)
舞台を通じて学んだしまくとぅばへの思いを語る琉球舞踊家の福島千枝さん=那覇市・沖縄タイムス社 しまくとぅばを共通語訳とともに五十音順でまとめた福島千枝さんのノート

 初めて来県したのは16歳のころ。ファンである県出身シンガー・ソングライター、Cocco(コッコ)さんの沖縄限定販売CDを買うために1人で来た。

 「空港へ降りた瞬間に空の青さにびっくりした。いわゆる沖縄病になった」と振り返る。

 アルバイトで旅行代を稼ぎ、年に1度訪問するようになった。滞在中に琉舞と出会い、19歳で地元の道場に入門。22歳で県立芸術大学に入学すると組踊も学ぶようになった。

 ただ、大学では談笑の時でもしまくとぅばが飛び交い、ついていけなかった。分からない単語を手帳にメモし、ノートに自身なりの共通語訳と共に五十音順でまとめた。

 そのノートでは、ア行に記される「あまんかい、くまんかい」は「あっちに、こっちに」、カ行に記される「がっぱい」は「後頭部の大きい人」などといった具合だ。

 また組踊の講義では現在、名誉教授である波照間永吉さんの解説を基に唱えを主語や動詞など文法的に解体して理解した。

 沖縄へ本格的に移り住んで12年。最近は沖縄芝居の舞台にも立つようになった。

 沖縄芝居は舞台の流れに合わせて各役者たちがアドリブを入れてくる。求められる言葉の能力は舞踊、組踊以上に高い。

 当初はせりふが控えめな役が多かったが、1月に悲恋の名作「中城情話」でヒロインのウサ小を任された。芝居を通して、一層しまくとぅばの深さを知った。

 好きなしまくとぅばを問われると、芝居や琉歌などに登場する「志情」(しなさき)を挙げる。真心、情など文脈によってニュアンスが微妙に変わる。

 「私にとってウチナーグチを象徴する言葉。沖縄の人々の深い心情を幅広く表現していると思う」

 舞台に立つと言葉の力を改めて知らされる。「ウチナーグチだからこそ沖縄の方々の心を揺さぶり、感動を呼ぶ。ただ、お客さんは年配の方が多く、理解できる人が減っている。学んでいる身分の私でさえ危機感がある」と語る。

 県外出身者でありながら実演家として言葉を習得し、実用している希少な立場だ。「同世代の平均的なウチナーンチュよりはウチナーグチが分かるかもしれない」と笑うように、日常の中で教える場面もある。

 「地元の人たちに『自分たちも勉強しないとね』と言われることがある。私の存在が少しでも刺激になってくれたらうれしい」と話す。

しまくとぅばを共通語訳と共に五十音順でまとめた福島千枝さんのノート