ベトナム・ハノイで開かれた2回目の米朝首脳会談。トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は、北朝鮮の非核化や米朝関係の改善などについて協議した。だが、合意文書に署名せず物別れに終わった。

 会談後に記者会見したトランプ氏は「建設的だった」と何度も強調。金氏を「指導力ある人物」と持ち上げて、今後も協議していく考えを示し、決裂の印象を薄めた。北朝鮮側の受け止めは明らかになっていないが、再び対決的な姿勢に転換するようなことになっては、2度も会談を実現した意義を自ら否定することになってしまう。

 東アジアの安定のため、非核化、米朝敵対関係の解消、朝鮮半島の平和体制構築に向けた動きは不可逆的なものでなければならない。後戻りすることなく、粘り強く交渉を継続するよう米朝両首脳に求めたい。 

 会談が不調に終わった最大の要因は、非核化の定義をあいまいにしたまま交渉を進めてきたことだ。

 非核化を巡って北朝鮮は、自国や朝鮮半島だけでなく、周辺にも米国の核戦力が接近しないよう求めている。これは日本や韓国を含めた東アジアの安全保障環境に影響を与えるものだ。

 昨年6月の初会談では、北朝鮮の非核化と米国からの体制保証の提供で合意し、今回は具体的方策をまとめていくはずだったが、結実しなかった。まずは非核化の定義を一致させ、周辺国からも理解が得られる議論をすべきだ。

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 2020年の大統領選をにらんだトランプ氏のパフォーマンスが目立つ「会談開催ありき」の姿勢が、今回の結果を招いたともいえる。

 独裁体制の北朝鮮との交渉では、トップ会談で決断を迫る方が有効との考えもある。しかし、非核化や米朝関係改善など半世紀以上にわたり、もつれにもつれてきた難題を克服するには、時間も労力もかかるのは当然だ。

 今回、首脳会談の日程が決まってから実務協議が行われたのは約1週間程度だった。北朝鮮は経済制裁の解除を求め、米側は寧辺の核施設だけでなくそれ以上の破棄を求めた。合意をまとめるにはあまりに時間が足りない。

 双方、具体論を詰め切れないままトップ会談に臨んだが成果は得られず、それだけに両国間の溝が深く、隔たりが広いことが鮮明となった。拙速なトップ会談に委ねず、しっかりとしたロードマップづくりが必要だ。

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 東アジアの平和と安定は、米朝だけの問題ではない。米朝交渉が足踏みをする事態は、日本人拉致問題の解決を懸案とする日本にとっても好ましくない。

 非核化のために日本が担える役割は何か、何をすべきか-。圧力を強めるだけでなく、北朝鮮への働き掛けの糸口をつかみ、米朝首脳会談の進展を促すことができないかを検討することも重要だ。

 拉致問題の解決のためにも、北朝鮮との関係改善は欠かせない。日朝国交正常化も展望した日本の主体的な取り組みを求めたい。