復帰50年を目前にしながら、沖縄の将来像に関する議論が深まらず焦燥感が漂うなか、希代の扇動家が談論風発の火付け役を買って出た。「沖縄問題、解決策はこれだ!」。耳目を集めるタイトルだが、具体性がないとの評価や、著者の経歴・特性にとらわれた批判の声も、すでにかまびすしい。

沖縄問題、解決策はこれだ!(朝日出版社・1490円)

 要は、挑発的な文面から本意を引き出し、論点を浮き彫りにすることだ。独立の気概を持てと呼びかけるが、力を持った政治家や役人がいない沖縄に、独立は無理というのが著者の本音だろう。また、沖縄問題の解決には政治的ケンカをしかけるべきで、本書はその指南書だとも。

 「歴史をみれば、本土の人間は沖縄に対して恐縮し、特別の配慮を持つ必要がある」が、その沖縄はいま「日本の中で最も可能性に富む地域だ」というのが著者の基本認識のようだ。その上で、県が策定した国際都市形成構想は「沖縄の潜在的な力を引き出し、沖縄を活性化することにつながる」可能性があるから、この構想をブラッシュアップし実行していくべきだと強調する。

 国際都市形成構想は、基地問題で緊迫した状況下にあって、沖縄県自ら将来像を描いたものだ。急ごしらえだったが、基本理念や方向性は明確に打ち出した。これにより、各省庁はもとより民間事業者からも多くの提案が寄せられた。交流と共生を掲げ、人・モノ・情報の拠点づくりを目指して、通信コスト・航空運賃の低減や国立劇場、OIST、国立高専、航空貨物ハブ基地の整備が進められてきた。

 本書が「グローバリズムの先取り」と評価する経済活性化策は、検討委員会において、大胆な規制緩和や税制措置、そして全県フリーゾーン構想など一国二制度を視野に議論された。そこには、沖縄を日本の経済先行モデル地域にしたいとの、田中直毅、稲盛和夫、牛尾治朗氏ら本土側委員の強い意志があった。

 こうして20年前の記憶がよみがえったが、当時と今では取り巻く環境が大きく変わった。日本の停滞とアジアの台頭。これに対応すべく、沖縄の役割機能は今後ますます大きくなる。これが本書の基調であり、沖縄の決起を促しているのである。

 われわれも、こうした議論の場と行動の拠点づくりを始めたところだ。(上原良幸・会社役員)

 【著者プロフィール】はしもと・とおる 1969年生まれ。弁護士。早稲田大学卒。2008年に大阪府知事、10年に地域政党「大阪維新の会」創設。11年から15年まで大阪市長。12年に国政政党「日本維新の会」創設。15年に政界を引退