真相究明には程遠い。

 毎月勤労統計の不正問題で厚生労働省の特別監察委員会が追加報告書を公表した。統計に対する意識の低さが際立つと批判したが、1月の報告書と同じく組織的隠蔽(いんぺい)はなかったと結論付けた。

 幹部は不正を認識せず隠蔽の指示もしておらず、担当課・室レベルで綿密な打ち合わせや周到な準備の形跡がなかったからというのが理由だ。

 監察委が「隠蔽は積極的に隠すという厳格な要件がある」と定義を狭めたからだ。

 幹部が不正を認識しておらず、担当課・室で「綿密」「周到」な打ち合わせや準備がなければ、組織的隠蔽はないということになるのだろうか。

 報告書には「虚偽説明は担当・室の長レベルの判断の下、部下の協力を得ながら行われた」と明記しているからなおさら疑問だ。

 積極的か否かに関係なくうその説明は隠蔽でないのか。一般社会では通用しない。

 不正が始まったのは2004年。全数調査の大規模事業所で東京都分を抽出で実施。担当課長らの判断としたが、動機の特定や長年続けた理由の解明には至らなかった。

 不正抽出を容認する記述が14年に調査マニュアルから削除された問題は「当時の課長の一存」と改めて認定。「疑念を生んだことは反省を要する」としつつ隠蔽否定の主張をこれまた追認している。

 対象事業所の部分入れ替え方式を導入した18年1月分の調査からデータ修正がひそかに実施されたことに元室長は不正をごまかす隠蔽意図を否定。監察委も容認した。

 官僚らの「言い訳」追認のオンパレードである。

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 衆院予算委員会の集中審議で、樋口美雄監察委委員長は担当者らの「隠蔽の意図」を否定する一方で、「非常にグレーのところがある」「シロであるとは言っていない」などと再調査の甘さを認めている。省内のメールや電子ファイルを含め調査を尽くしたのか疑念が払拭(ふっしょく)できないのである。

 18年1月の調査手法の変更後に賃金の伸び率が高水準となった。元首相秘書官による「官邸の意向」が働いたのではないかとの疑惑が浮上している。しかし監察委は調査しなかった。「専門的な視点からも合理性を欠いているとは言えない」というのが対象外とした理由だが、調査が不十分と言わざるを得ない。

 樋口氏は厚労省から多額の交付金を得ている厚労省の外郭団体、労働政策研究・研修機構理事長である。

 やはり厚労省から完全に独立した第三者委員会を設置して徹底調査する必要がある。

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 19年度予算案が先週、衆院を通過した。論戦の舞台は参院予算委員会に移った。予算案の組み直しという前代未聞の事態を引き起こした統計不正問題である。

 統計は政府の政策判断の基礎となる重要なものだ。統計不正を未解明のまま終息させるようなことがあれば、日本の統計が国際的な信用を失いかねない。

 参院では統計関連部署に就いていた歴代の関係者を招致し、統計不正の真相究明に当たってもらいたい。