【渡嘉敷・座間味】国立公園に指定され、5日で満5年を迎えた慶良間諸島。2003年以前に渡嘉敷島へ持ち込まれた外来種のニホンイノシシが、14年から座間味島や阿嘉、慶留間島にも生息域を急速に広げている。農作物やウミガメの卵の被害も激しくなっており、住民からは対策を求める声が上がる。識者は「外来種の安易な持ち込みは島独自の生態系のかく乱につながる」と早急な対策を訴える。(南部報道部・知念豊)

イノシシに荒らされたネギ畑を指さす梅田昇さん=1日、座間味村座間味

 渡嘉敷村で最初にイノシシが捕獲されたのは03年ごろ。住民が食用として九州から雄1頭と雌2頭を持ち込み、逃げ出した個体が繁殖したものとみられている。村は11年に「村鳥獣被害対策協議会」を立ち上げ、駆除に乗り出した。 箱わなを仕掛けて年間約100頭ほどを捕獲し、これまでに約700頭を駆除してきた。だが、村担当者は「イノシシは毎年4頭前後を出産するなど繁殖力が高い。肌感覚では、生息数は逆に増えている」という。

イノシシの食害

 座間味村の外地島では14年3月ごろに初めて1頭が捕獲された。村担当者は「新たなえさ場を求めて渡嘉敷島から渡ってきた」とみる。17年からは座間味島の畑でジャガイモやサツマイモが食害に遭うように。これまでに少なくとも20人以上の農家から被害の報告が寄せられており、耕作をやめた農家も出ている。

 18年9月には、座間味島北西にあるウミガメの産卵地として有名な「ニタ浜」で、アオウミガメの卵が食い荒らされているのが発見された。すり鉢状の穴の周囲に卵の殻が散乱していたという。村も17年から箱わなを仕掛けているが、初年度の駆除数は2頭、18年度は7頭にとどまり、十分な効果は上げていない。

 2月初旬にネギ畑を荒らされたという座間味区の梅田昇さん(89)は「畑のそばにあるシークヮーサーの根っこもやられた。今年は花が咲かないんじゃないか」と不安をのぞかせる。阿真区の中村正男さん(76)は、昨年の冬に自前でフェンスを巡らしたといい「費用がかかって大変」と顔を曇らせた。

広がる被害

 座間味村は17年12月、県に対策を要請した。県は有識者らでつくる鳥獣捕獲事業検討委員会を立ち上げ、両村で根絶に向けた効果的な駆除方法の検討を開始。18年7月から11月にかけて同諸島の10島を調査した結果、渡嘉敷、儀志布、座間味、阿嘉、慶留間の5島でイノシシの痕跡が確認された。

 県の担当者は「渡嘉敷だけでなく、座間味島でも全域で痕跡が見つかったことに驚いている。このままだと他の島にも広がりかねない」と危機感を募らせる。県は19年度~20年度で村内のハンターの育成や捕獲手法を確立し、21年度から集中的に大量捕獲を目指すとしているが、「全国的にも根絶の事例はなく、難しい事業になるだろう」と厳しい見通しを示す。

 沖縄国際大の宮城邦治名誉教授(動物生態学)は「住民や観光客への被害も想定される。遅きに失した感はあるが、県や村は早急に対策に取り組むべきだ」と指摘する。